湖底より愛とかこめて

ときおり転がります

ドラマ『陳情令』キャラクターのテーマと見どころ+吹き替え版の紹介

本稿は、ドラマ『陳情令』キャラクターの見どころを、未視聴および初見の方に向けて紹介するかたちのレビューです。

これから見進める初心者の方向けではありますが、謎解きの核心には迫らないまでもネタバレがチラホラはあるのでご注意ください。

 

地上波でやってるとこもあるしAmazonやらなんやら配信サービスで見られるよ! でも吹き替え版は今のところほとんどやってないので、吹き替えがいい人はこの記事の最後に今んとこ唯一の配信を紹介してますが、ドンドン配信終了してるので全部見るには↓このブルーレイボックス↓を買うしかないんだ(買ったのだ)吹き替え入ってないボックスもあって紛らわしいから参考にしてください。

 

 

『陳情令』とは

 ドラマ『陳情令』は、小説原作の中国ドラマです。

ざっくりした作品見どころおすすめは以下の記事でやってるからよろしくな。

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一言で言うと

仙人が空飛ぶ系歴史ファンタジーアクションの群像劇

なので、登場キャラクターが多いうえに日本人にとっては名前の響きも聞き慣れないし、姓名のほかに「字(あざな)」や「二つ名」を使って呼ばれたりもするので誰が誰だかわかりづらいという問題があります。

そのうえ、黒ロン毛男子になりたい当方やロンゲスキーの方々には朗報ですが、登場人物がチョイ役までほぼ全員黒ロン毛ハーフアップなので、パッと見マジで見分けられないのではと心がくじける可能性が高いです。

なので今回は、当方のお気持ちやキャラクターが表現しているテーマの見どころも含めてキャラ紹介をしたほうが迷ってる方も見やすいのではないかとおもい、大きなネタバレにならない程度にキャラ語りをするものです。

 

姓名・字・二つ名について

 まずは凡例的に、日本の感覚だとどういうことなのか理解しづらい中国の人名の呼び方のバリエーションについて先に確認しておきましょう。

おそらく日本で一番「名前のバリエーション」をよく知られている古代中国有名人といえば、最近パリピなどもやっている孔明さんです。「待てあわてるなこれは孔明の罠だ」など横山光輝作品で呼ばれていることで日本で一番通りがよい「孔明」は本名ではなく「字(あざな)」です。

孔明さんの場合、

姓(家名)    :諸葛

名(諱(いみな)):亮

字(あざな)   :孔明

号(通り名)   :臥龍、伏龍

となります。

この中でも特に親につけてもらった個人名「諱」は取扱いに注意が必要です。親や主君でもなければ呼ぶのはたいへん無礼とされました。なので、諱と関係のある文字を選んだりして字(あざな)を作り、身の回りの人には「私のことは孔明って呼んでください」と名乗ったのです。

じゃあ遠めの関係の人が「佐藤さん」「鈴木氏」みたいに敬称つけて呼びたいときはどうしてたのかというと、「姓+役職名」か「号」がふつうでした。「諸葛丞相」「臥龍先生」みたいに。

また、ラブリーな弟妹やキッズに対して「〇〇ちゃん」「お〇〇」などのようにカワイカワイコちゃん呼びをするときの「阿(アー)〇〇」という呼び方もあります。

 

 これらのことをふまえたうえで、『陳情令』における姓名と字と号の使い分けをみると、

  • だいたいの通称として「姓+字」が使われる
  • 尊敬や畏怖の対象は「号」や「姓+役職」で呼ぶ

て感じですね。呼び方で「誰や!?」て混乱がおこるといかんし、普通とは違う呼び合い方に関係性が表れていることも多いので、今回のキャラ紹介では特殊な呼ばれ方もいっしょに紹介していこうとおもいます。

 

 じゃあキャラ紹介に入っていくんですが、イメージを湧かせやすくするためにドラマビジュアルだけでなく原作のイメージイラストとかも入れていきますね。

 

 

雲夢江氏(うんむ・じゃんし)

 魏無羨が属していた仙門。侠客を祖にもち、水辺の豊かな街「蓮花塢(れんかう)」を根拠地とする。弱きを助け強きをくじく気持ちのいい気風で、泳ぎとかも得意。イメージカラーは青紫

「雲夢」は地名で、仙門は基本的に所属を「地名+家名」で名乗る。分家とかもあるしね。どこどこのなに家。

魏無羨(ウェイウーシェン)

 姓字は魏無羨(ウェイウーシェン)、姓名は魏嬰(ウェイイン)。邪術の魔王として畏れられた号は夷陵老祖(いりょうろうそ/いりょうのろうそ)。吹き替えの声は木村良平さんです。

主人公にしてラスボスヒロイン。すでに↓この間の記事↓で紹介した通りの、とことん顔がさわやかなタイプの両津勘吉です。顔面の力に加え、黒メイン赤サブの衣装を着ているのは彼だけなので画面でもわかりやすいはずです。

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 魏無羨のみどころは、氏族の結束や家名を傷つけないメンツが重視される(現代中国でもかなりそうですが)作品社会の中で、孤児の身の上とその才気、清らかな魂によって良くいうと「縛られない」、悪くいうと「居場所がない」ところです。

良くも悪くも「イエ」が存在の基盤となっている世界の中の、彷徨のみなしごです。

引き取られた名家の「江(ジャン)氏)」の家族の中では「養父に特別に愛された一番弟子」「師姉にかわいがられる弟」「跡取りの師弟と相棒関係」でありながら、養父・江宗主とその妻である女主人との間にいさかいを生じさせている火種にもなってしまっています。「名家の娘が家柄をかさに着て江宗主と結婚し恐妻になったが、江宗主には想い人がいてずっと忘れられない」という世間の噂があり、その「想い人」が江氏に仕える別の男と結ばれて生まれた子こそが魏無羨だからです。魏無羨が江宗主に褒められるほど女主人と跡取り息子のメンツを潰すことになってしまい、ダブルバインドでどうすりゃいいのよ。

甘やかされながら憎まれる、一番弟子として期待されながらも跡取りの実子よりあまり優秀ではみんなが困る、家族だけど本当の家族じゃない……。宙ぶらりんの魏無羨は、孤独を陽気さに隠した妙に落ち着きのない奴に育ちました。

本当のところ、人は皆帰る家のわからないみなしごのようなものです。居場所のない彼が縛られないからこそできる義挙、その美しさと痛々しさ、人が真に自分の「帰る場所」になってくれる人を得るとはどういうことなのかが、魏無羨の物語には描かれています。

 

 おおむね「魏公子(魏の若君)」、とか「魏無羨」と呼ばれ、世の中から警戒されたり憎まれたりするようになっても「おのれ魏無羨め!」て言われます。弟のような存在の江澄からもツッパった感じで「おい魏無羨!」て呼ばれてます。

不倶戴天のライバルとも無二の友ともつかぬ独特の関係になっていく、もう一人の主人公藍忘機からは「魏嬰」と姓名で呼ばれるようになります。ほぼしゃべらねえ奴なので初めて名前で呼びかけてきたときは謎の感動。

かわいがってくれる養父や師姉からはいつまでもチイカワな存在として「阿羨(アーシェン)」と呼ばれます。「羨羨(シェンシェン)」とかも。

「わかんない、羨羨は三歳だもん」とかふざけて自分で言ったりもします。さんしゃいではない。

 

江澄(ジャンチョン)

 姓字は江晩吟(ジャンワンイン)、姓名は江澄(ジャンチョン)、号は「三毒聖手」。基本は江澄でOKです。吹き替えの声は全メディアミックスで緑川光さん。しかも鞭を使う。鞭振る男性キャラ大好き。

雲夢江氏の跡取り息子で、魏無羨にとって弟のような悪友のような相棒のような存在です。若くして二人は「雲夢双傑」と名高いなかなかのツワモノでした。ふたりはプリ傑(ぷりけつ)!

魏無羨の強さを身内として誇りに思い、友達としても兄的存在としても好きで甘えているところもある……のですが、強烈な母親に似て気位が高くて気性激しめであるため嫉妬グギギでもあります。ツンデレ。

ただツンデレなだけならよかったのですが、何やっても勝てないし魏無羨のほうが江氏の気風に合ってるし、父親は跡取りの自分よりも魏無羨を好きそうだし、おまけにそのことで父母がケンカしがちだし……という家庭の事情がジワジワ江澄を追い詰めます。

 作中で最も眉間を厳しくし怒りまくっているキャラですが、そのぶんひどい目にも遭いまくっているので愛してあげてください。

わんこが好きだけど魏無羨がトラウマでめちゃくちゃ犬苦手なので泣く泣く手放した。かわいそう。

 

 若者時代は「江公子(江の若君)」、宗主を継いでからは「江宗主」、家族からは「阿澄(アーチョン)」と呼ばれます。「江澄」って無礼講で呼ぶのは魏無羨くらいかな。

 

江厭離(ジャンイェンリー)

 江家の一番上のおねえちゃん。いつも薄紫の儚げで優美な衣装でアクセも超かわいい。吹き替えの声は早見沙織さん。大好きすぎる。

弟とは逆に父親似で気立てが良くて芯が強く、お料理上手。両親が不仲なので、家族の中で優しく世話焼きな「おかあさん役割」をやっちゃってるところがあります。宙ぶらりんな魏無羨にとっては心のよりどころ的な存在で、初恋の人♡です。

ドラマ『陳情令』では原作よりも出番が増え、魏無羨がおねえちゃん大好きな気持ちわかるわ~な演出が重ねられて感情移入MAXです。そりゃ好きだよこんなん。女神だよ。

彼女は作中でお嫁に行くのですが、魏無羨はお婿さんとおねえちゃんを自分のせいで死なせてしまうことになり、よりどころ、全崩壊。かくして絶望した魏無羨が自滅していくところから物語は始まります……。

おねえちゃんの作る「蓮根と骨付き肉の汁物」はおいしそうすぎて圧力鍋で何回も作った。うまい。

 魏無羨からは「師姉(ねえさん)」、江澄からは「姉上」、親や夫、義母からは「阿離(アーリー)」と呼ばれます。中国語版や字幕では他人からお嬢さんに対する呼びかけとして「江どの」とも呼ばれます。ミス・ジャン。中国読みだと江姑娘(ジャンクーニャン)。

 

姑蘇藍氏(こそ・らんし)

 藍忘機の属する仙門。元僧侶を祖にもち、山奥の秘境「雲深不知処(うんしんふちしょ)」に住む。厳格な規律を守る求道者の門派。イメージカラーは真っ白と薄青

藍忘機(ランワンジー)

 姓字は藍忘機(ランワンジー)、姓名は藍湛(ランジャン)、号は含光君(がんこうくん)。吹き替えの声は立花慎之介さん。

やはり前回の記事で紹介した通り、基本完璧超人規律ロボです。規律正しい名門の中でも群を抜いてクソ真面目で潔癖でやや世間知らず、無口無表情な氷の美貌と文武両道の高い実力で若くして仙界のスター選手として尊敬されています。一切笑わないしプーさんも抱っこしない羽生結弦選手みたいな感じ。他人にさわられるのを嫌がる。

 

 藍忘機のみどころは、言葉少なだからこそその目力が語る頑固さと一途さ真実を見つめようとする勇気です。

彼は頑固で聖人君子ですが頑迷ではありません。魏無羨とは別の方向性で子供のように素直で、知りたいことや守りたいものにどこまでもまっすぐな視線を注ぎます。

 完全無欠の貴公子である藍忘機ですが、家庭にはちょっと問題がありました。

藍氏は「僧侶だった始祖が運命の伴侶をみつけ、還俗してともに仙人となった」という来歴をもつだけあって、「運命を変える大好きな人」に出会いがちな血筋のようです。父母が結婚する前、宗主である父は母に一目ぼれ、超片思いラブしていたのですが、母が大罪を犯してしまいます。父は母が罰されないようかばうため、母にはその気がなかったのにブルドーザーのように周囲の反対を押し切り、結婚して軟禁して閉じ込めたそうです。自分でも絶対アカンことしとるとわかっている父はそのうち隠棲して、愛する人に会いに行くことも自分で禁じました。母は月に一度だけ会うことを許された子供たちを愛しんで軟禁の身にとどまり、軟禁された館から自由になることなく早世しました。

「愛しているから、世界を敵に回しても守り、かばう」というロマンティックな行動は、アツいし物語のハッピーエンドとして描かれることさえ多いですが、非合理だし、結局父母は愛によって個人的にも社会的にも幸せや居場所を得ることができませんでした。

人を愛し、本当に大事にするってどういうことなのか?

幼いころ母を失ってから藍忘機はずっと、この「愛」のわけわからなさについてじっと考えています。彼の一途なガン見が「運命の人」魏無羨との関係にどんな答えを出せるのか、そして、愛に挫折した父母のもう一人の子である彼の兄との対比が藍忘機のみどころになってきます。

 

 若者であった過去編では「藍二公子(藍の二の若様)」と呼ばれ、十数年後大人になると「含光君」と号で呼ばれることがほとんどです。江澄がア゛ーッてなると「藍二めー!」て略して呼んだりもする。

魏無羨だけが「機兄」とかいろいろ呼び方を試しても無視されたため失礼にも「藍湛」と姓名で呼びはじめ、「お前も名前で呼び返したらいいだろ」と挑発しました。

家族や兄の義兄弟からは「忘機」と呼ばれる弟ちゃんポジションでもあります。

逆に、藍忘機からは兄、叔父、魏無羨くらいしか呼びかけること自体ほぼありません。

 

藍曦臣(ランシーチェン)

 姓字は藍曦臣(ランシーチェン)、姓名は藍渙(ランホァン)、号は沢蕪君(たくぶくん)。いちおう姓名ありますがこのあたりから使われないですね。吹き替えの声はどのメディアでも森川智之さん。上のドラマ写真の左側の人です。美声で水色の服着てる人がいたらこれ。

藍忘機の兄で次期宗主→宗主となります。若者時代から実力と人格を備えた立派な人物として名高く、ずっと「沢蕪君」の敬称で呼ばれています。「荒れた世をうるおすひと」の意味です。

規律正しく文武両道な聖人であるだけでなく、藍忘機に足りない温厚な笑顔や協調性社会性、穏やかな余裕のある慈悲深い態度までももっています。いろんな人と分け隔てなく付き合い、だいぶタイプの違う義兄弟とかもいます。社会不適合レベルでしゃべらない藍忘機の気持ちをくみとり、深い助言をしてくれることも。

おそらく作中で最も完璧で、万人に敬愛される人格者。

……のように見えます。見せてるだけでなく、実際にそうです。いいひと。

 

 完璧な、すばらしい人格者のキャラクターが物語に出てくるとき、代表的にはふたつの役割があるとおもいます。

ひとつは、迷う主人公たちを導き支えるよき大人、少し遠い助言者の役割。

もうひとつは、「そんな完璧なこの人でもはまってしまう落とし穴」を際立たせ、何が違ったのか?と主人公たちの対比になる役割。

(最近では『機動戦士ガンダム 水星の魔女』のシャディクが、「理想も努力も愛もあるけれど作品のテーマとは違う方向に行った者」として描かれてたみたいな感じですね)

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藍曦臣はそのどちらの役割も果たしていてすごいんじゃないかなっておもいます。

彼がどんな落とし穴にはまってしまうことになるのか、それは物語のだいぶ終盤になって、むしろすべてを視聴し終わってから考えだすようなことなので、基本「優しくて聡明ないいお兄さん」だと思ってすっかり安心して見ていてまったく問題はありません。

 

 おおむね号の「沢蕪君」で呼ばれ、藍忘機からは「兄長(兄上)」、叔父と義兄弟の聶明玦からは「曦臣」、義兄弟のそのまた弟の聶懐桑からは「曦臣兄さん(中国語では「二番目のお兄ちゃん」の意味で「二哥」)」と呼ばれます。

ちなみに兄長(ションチァン)は藍忘機のかなり堅苦しい兄の呼び方で、ふつうは兄は哥(グァ)をつかって呼びます。

 

岐山温氏(きざん・うぇんし)

 仙門で初めて門派より血縁を重視することを提唱した中興の祖をもつ、火山に洞窟宮殿「不夜天(ふやてん)」をかまえる仙門の代表。イメージカラーは赤

温晁(ウェンチャオ)

 姓名しかわかんないけど温晁(ウェンチャオ)。一番出張っててわかりやすいメインの悪役です。悪役演技がハデすぎるのでこの人がわからなくなるってことはない。吹き替えの声は吉野裕行さん。こちらも最高の演技。

仙門を統括するトップである仙督・温若寒(ウェンルオハン)の息子、第二公子でぶっちぎりの悪役令息です。「じなん」だ(スパイファミリー)。支配力を急速に拡大しようとする温氏の先兵として各仙門にムチャ振りや脅迫をはたらき、圧をかける係。女癖も悪く、俳優さんはすごいイケメンなのに感じ悪いポイントがすぐカンストする。

 「温二公子(温の二の若君)」または単に「二公子」と呼ばれます。

 

温寧(ウェンニン)

 姓字は温琼林(ウェンチョンリン)、姓名は温寧(ウェンニン)、のちに「鬼将軍」と呼ばれる魏無羨の最強の配下となります。配下となっているゾンビの姿が上。吹き替えの声は島﨑信長さん。

序盤では魏無羨が仕立て上げた伝説のゾンビ兵器だぜ!!という評判で髪を振り乱し真っ黒な服と鎖を引きずって怪物じみたバトルを繰り広げるのですが、回想編で出てくる「生前」の姿は、まあ上の画像はアニメのキャラデザですけど、とってもカワイイ気弱で素直な少年だったのです。すごいギャップ萌え。生前は温氏の赤い服を着てるんですけど、赤い服の若い男性は上の強烈な悪役令息とこの気弱なカワイコちゃんしかいないのでわかりやすいです。

 彼と姉の温情は、けなげに生きる人々が運命と社会の理不尽の犠牲になる物語の展開をリードしています。彼の幼子のようなポヨポヨの気弱さ健気さと、「鬼将軍」としての荒ぶるパワーの対比は、『ファイアーエムブレム風花雪月』のディミトリのような踏みにじられた声なき弱者の怒りと恨みの悲しい力を感じさせます。

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魏無羨の弟分ですが、「姉を慕うかわいい弟」として魏無羨と共鳴する存在でもあります。

 

 基本的には温寧と呼ばれ、姉からは「阿寧(アーニン)」と呼ばれます。

 

温情(ウェンチン)

 温情(ウェンチン)。吹き替えの声は川澄綾子さん。赤い服で険しい顔のとんでもねえ美人。

温寧の姉で、岐山温氏の分家「大梵山温氏」の当主一族の末裔です。代々医者の家系で、彼女も天下に名高い名医です。カッコいい。

早くに父母を亡くし、幼い弟とともに岐山温氏に養育された恩があるため、岐山温氏が他の仙門に侵略をしはじめても離脱できずにいます。それでも侵略と殺戮には関わらないよう、医者として命を救う使命を果たしていましたが、中国の名門世界では栄光も罪も一族全てに被さってくるもので……。

 彼女のキーワードは「報恩」です。ほとんど何も悪いことはしていないし、善行を行ってきたし、正義と恩とまた別の恩との板挟みの中で必死に悪事に抵抗しようとさえしてきた人たちが、その「家の名前」……生まれの運命によるこの世での居場所のなさだけでつらい思いをし、一生抜け出せない理不尽さ……。それと戦わないで、何が義か?

「情深い姉」として、「弟」である魏無羨と好相性。同じく「弟」である江澄からちょっぴり片思いされているのは原作にないドラマオリジナル要素ですが、彼らの縁やその後の運命を考えるとすごく味がするアレンジで技ありです。実写化に際して女性キャラの出番増やして新しい恋愛要素生やすと微妙になることが多いですが、これはいい改変だよな。

 

 同輩からは「温どの」と呼ばれることが多く、弟からは「姉上」と呼ばれます。中国語だと「じぇじぇ(姉姉)」って呼んでてかわいい。

 

蘭陵金氏(らんりょう・じんし)

 皇族を祖とし、豪華絢爛な宮殿「金鱗台(きんりんだい)」に住むお金持ち仙門。イメージカラーは金色。直系の男子は眉間に朱色の点を描いてるのも特徴。政治力や権勢重視。

金子軒(ジンズーシェン)

 金子軒(ジンズーシェン)。吹き替えの声は赤羽根健治さん。俳優さんがめっちゃ美白の貴公子ではまり役。

魏無羨が大好きな師姉の、母親同士が決めた許嫁です。仙界で一番お坊ちゃまと言っても過言でない御曹司で、そういう扱い心得てよね。

鼻持ちならないツンとすましたボンボンでド派手に金を使いキラキラの従者をゾロゾロ連れてるので、魏無羨は「孔雀男」と呼んであんな奴に師姉をやれるかよーッと嫌っています。決して悪役令息とかスネ夫とかではないのですが、果てしなくチヤホヤされ最良のものだけを与えられて育ってきたため、世間の評判が地味めな年上の許嫁を大事にするのがなんか恥ずかしくてすげない態度をとってしまったりします。コラーッ

生まれに恵まれてるから、そんな甘酸っぱい悩みで子供っぽい態度をとったりしてるヒマがある奴ともいえます。それに罪があるわけではないし、若者は十分に守られて甘酸っぱいウダウダとかもするべきなのですが、厳しい世の中では「そんなことをしている余裕はなかった」人というのもたくさんいるわけですよね。それは、彼のすぐそばにもいて、明るい道からは見えもしないのかもしれない……。

そのせいなのか、何のせいなのか……それは実際に最後まで見て考えてみてほしいのですが、彼は罪なくして悲劇の死を遂げることになります。

 

 魏無羨や江澄がやや敵対的に「孔雀男」「金子軒」と呼び、親兄弟やイトコが「子軒」と呼ぶ以外は「金の若様」と呼ばれます。

 

金淩(ジンリン)

 姓字は金如蘭(ジンルーラン)、姓名は金淩(ジンリン)。基本的に金淩でいいです。

上の金子軒と魏無羨の大好きなおねえちゃんが晴れてラブラブに結ばれて生まれた、仙界で一番お坊ちゃまVer.2.0です。けっこう父とビジュアルが似ていますが、彼が出てくる十数年後編には父は死んでるのでどっちだかわからなくなることはないね。あとかわいくてでかいわんこ「仙子(シェンズ)」を霊犬として連れています。

魏無羨のせいみたいな感じでほんの赤ん坊のころに父母を亡くし、親なし子として周りにからかわれ孤独に傷ついてきた、魏無羨と同じ寂しいみなしごです。父母がいなくても実家が超絶太いので何不自由ない金持ち暮らしをしており、父母のきょうだいも彼をたいへんかわいがるので、孤児のみじめさや寂しさと悪魔合体して高慢ちきなワガママお嬢様に育ってしまいました。ツンデレ江澄の甥なのでそれもある。

魏無羨にとってはいちばん自分の罪を感じさせられる存在であり、ほんとなら死んでしまった父母のかわりのように守ってあげるべきだと思って不器用に守護します。

 

 親や叔父たちからは「阿淩(アーリン)」と呼ばれます。

 

清河聶氏(せいが・にえし)

 肉屋(屠殺業)を祖とし、岐山のふもとの岩山の間に城塞「不浄世(ふじょうせ)」をかまえる体育会系の仙門。イメージカラーは鉄色

優美な両刃の直剣ではなく重そうな片刃の刀を使う刀道をきわめています。ドラマではチムメンは髪型に細い三つ編みを編み込んでいます。かわいいし戦闘部族っぽい。

聶明玦(ニエミンジュエ)

 聶明玦(ニエミンジュエ)、号は赤峰尊(せきほうそん)。吹き替えの声は白熊寛嗣さん。堂々たるビジュアルですがかなり若くして聶氏の立派な当主をやっています。

当方のNo.1推し。ドラマじゃそこまで出番は多くないけど男らしくてカッコよすぎるし物語全体への関わりがバクモエ。この方の出番が増えるので原作(中国語版)を買った。

生身の人間の純粋な戦闘力としては作中随一で、スゲー重そうで怖い刀もフルオートで敵を攻撃したり鞘に戻ったりします。うおーカッコいーっ(冷静になれない)

 彼は藍忘機の兄・藍曦臣と義兄弟の契りを結んでおり、のちに後述する孟瑤も義兄弟に加わります。この三人は性格がすごくバラバラで対比構造になっています。三人の中で明玦兄は悪を激しく憎み、一歩も引かずガン詰めする正義漢であり、目力にもそれが表れています。

実はこの作品では「目」のありようが表現として大事にされています。藍忘機の一途に友を見つめる目をはじめ、それと対比になる伏せる目、そらす目、恨んで睨む目、閉じた目……。

他人とともに生きていくために「見ること」は不可欠です。世の流言や偏見によってたやすく曇る色眼鏡に聶明玦は惑わされず、彼の炎のような目には迷いがありません。しかし、「正しい」「迷いがない」だけではときにアカン場合もあるのかもしれない……。

 

 義弟や実弟からは「兄上」、他は基本「赤峰尊」または「聶宗主」と呼ばれます。

彼に対する「兄上」の表記は中国語では大哥(ダーグァ)で、ファンダムではそうやって呼ばれることが多いです。

 

聶懐桑(ニエホワイサン)

 聶懐桑(ニエホワイサン)、号っていうか大人になってからつけられた悪口的なあだ名が「一問三不知(いちもんさんふち)」、日本語では「知らぬ存ぜぬ」の聶懐桑。何か問われたり頼まれたりすると「知らない知らない、ほんとにわかんない!」と答えるマヌケぶりからついた通称です。「そうせい様」みたいなもん。吹き替えの声は花江夏樹さん。

世界一かわいいNo.2推し。なんか……リンハルトじゃない……? ナヨッとしていて扇子をパタパタさせていたらこいつ。

魏無羨の学友というか遊び仲間で、人生エンジョイ勢の風流人なのでウマが合い大量に持っているエロ本を貸してくれる春画先生です。暗記も武術もさんざんだし不真面目ですが、教養豊かで絵画や詩など芸術の才があります。生まれてくる家を間違えたタイプ。体育会系の実家の中では強~い兄に厳しくも大切に守られ、門弟からもわりと姫チャン扱いを受けています。

ある意味異端な仙士であり、魏無羨の邪道の発想にも理解を示す搦め手派。家の方針である正攻法の刀道の修行はしたくない。

 本作では「家族構成」がけっこう重要な読みどころになっています。なかでも「弟」は多く、特に「輝く跡継ぎ長男と、そうじゃない次男」という聶兄弟の関係が、他の兄弟とも響き合ってくることになります。

ちなみに、懐桑は実兄を頂点とした義兄弟三人をみんな兄♡として頼りに頼っており、愛され末っ子ポジに自らおさまりにいく生存戦略をとっています。

 

 仲のいい学友には「聶兄」と呼ばれ、家の中では「若君」「若様」と呼ばれます。兄の義兄弟たちを「二哥」「三哥」と呼び、兄たちには「懐桑」と呼ばれます。

 

孟瑤(モンヤオ)

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 孟瑤(モンヤオ)。聶氏に仕え、新参ながらやり手で宗主に見出されて右腕を務めています。序盤は見た目も役回りも地味~なので印象に残りづらいのですが、吹き替え版だと声が石田彰さんなので絶対わかるし存在感がやばい

当方の感情移入度No.1。モデルしかいねえのかという長身男性ばかりの中でやや低身長で、上目遣いがきゅるきゅるのバッチンバッチンなコケティッシュ男子。所作もなんかしなやかで美しい。そのうえ、上の懐桑くんの「執事」みたいな感じで登場し、武闘派宗主の「やり手の側近」をやったと思ったら「敵か味方かわからない謎の事件」をかましてくるので峰不二子というあだ名をつけました。お衣装も髪型も変わるしそのうち「スパイ」とかいろんな役もする。不二子じゃん。声が石田彰の不二子、なりて~。

目バチと不二子ぶりに感動して初視聴当時描いた絵。

 孟瑤もまた「変えられない生まれ」と「家族」の呪縛を受けた人で、のしかかる偏見の重みをかいくぐり、立派に身を立てようと努力していきます。彼にとって「家族」がどのようなものであったのか、それは視聴して考えてみてください。

 中盤までは基本「孟瑤」と呼ばれます。藍のお兄ちゃんとは仲良くなり、「阿瑤(アーヤオ)」と愛をこめて呼ばれます。

 

 

 このメインキャラの物語に追加して、さらに構造読解を深める『義城編』という独立した挿話があるんですが、そのキャラはまあ……見てもらってからおいおいということで……。

本作の登場人物たちは、過去編中盤までの岐山温氏みたいなわかりやすい侵略者以外は「悪い人」「いい人」と切り分けられないです。みんな健気にがんばって生きていて、どこかしら美しいとこがあり、なんかしら間違ってたりする。

当たり前のことみたいですが、その「なんかしら間違ってる」ところが「確かにそういうことあるよな……」「でもどうしたらいいんだよ……」と身につまされものを思わされる感じが徹底しており、それが群像劇としての凄みと厚みを生んでるな~っておもいます。何年も噛める~。

風花雪月無双……やるか……。

じゃなくて

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