湖底より愛とかこめて

ときおり転がります

「四大元素」と4ルート―なぜ「風花雪月」なのか②

 本稿では、『ファイアーエムブレム 風花雪月』の4つのルートのテーマタロット小アルカナの関わりについて考察していきます。

 

 

 いや~~新年が明けてずっと忙しくしていまして、ブログを書けないかわりに寝落ちするまでの短時間にスイッチを触っていたため帝国ルートが無事終わり、風花雪月についての理解がより深まりました。よかったです(冬休みの日記)。

残すところ王国ルートのみとなりましたので、だいぶ前の記事↓で解説しました『風花雪月』の「4つの物語」のテーマについて詳しいことが見えてきたようにおもいます。

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 ですので、今回は上記事の「『風花雪月』の4つのルートはヨーロッパ世界の四大元素、タロット小アルカナの4つのシンボル(スート)に対応してるっぽいよ」という読みを、各ルートについて掘り下げて書こうかと。

以下、各ルートのエンディングまでのネタバレを含みます。

 

 

四大元素(エレメント)

 『風花雪月』の世界の「紋章」がタロット大アルカナにそれぞれ対応していることをシリーズ記事で解説していってるのですが、その目次記事でも「4つのルートが、タロット小アルカナの4つのマークに対応している」ということを話しました。

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こちらの記事(外部サイト)でも詳しく解説されています。

 

 「小アルカナ」って何かっちゅうと(2回目)、トランプのカードのもととなったものだと思ってください。トランプにはクローバー、スペード、ダイヤ、ハートの4つのマーク、マークごとに1~10までの数字がついたカードと3枚の絵カードがありますよね。トランプと小アルカナの違いは

・「絵札」にあたるえらい人が描かれたカードが1枚多くて4枚ある

・1~10までのカードにもストーリー性のある絵が描いてある

・クローバーは「杖」(棒ともいいます)、スペードは「剣」、ダイヤは「金貨」、ハートは「聖杯」

ってとこです。あのマークはもともとは記号ではなくモノで、4つのマークそれぞれに一連のストーリーがあったのですね。

(以上おさらいでした)

 

 この小アルカナの4つのシンボル、ヨーロッパ世界の哲学における「四大元素(エレメント)」に対応しています。この「4」が世界を構成しているという考え方はだいたいのヨーロッパ哲学の基本で、『風花雪月』の中でも「四聖人」や4つの基本色の飾り床にみることができます。

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↑コレや。飾り床のタイルの色が「赤」「青」「緑」「黄色・白」でカラフルにできてるのがわかります。月初めの暦絵の彩色が鮮やかなことでもわかるように中世の装飾はむしろ近代よりカラフルなんですよね。

 タロットの大アルカナの要所要所でも四大元素はみることができます。

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「魔術師」のカードはテーブルに例の「杖」「剣」「金貨」「聖杯」を置いています。これは魔術師がこの材料からなんでも作り出せることを意味しており、『風花雪月』の中では多くの聖武具を作った聖マクイルや、多芸多才で片付けができない混沌の女マヌエラにあたります。

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 そしてこの間解説したヒルダちゃんの「運命の輪」のカードね、この四隅に描かれた「獅子」「ヒト」「牛」「鷲」がそれぞれ四大元素と対応しており、この動物は黒鷲の学級や青獅子の学級とはシンボルと意味は合わないっぽいんですけどとにかく四大元素をバランスよく配置。

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 そして「運命の輪」アルカナと非常に似た構成をしていると↑記事でものべた、先生やソティスの炎の紋章があらわす「世界」のアルカナの四隅にも同じ動物は描かれ、「世界のすべて」を表しています。世界に東西南北があるがごとく、ヨーロッパ世界の哲学には四大元素、四つの方向があるってことが繰り返し示されています。

 

小アルカナと四大元素

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 前回の記事では、この「4つのモノ」とそれに対応するヨーロッパ世界の四大元素が、「人間性のたどり着くべき4つの目標」を象徴していて、それが『風花雪月』のそれぞれのルートのテーマ性となっているっぽいぞ~さーてどれがど~れだ? とフリを残して年を越しました。

どれでしょうか?を考えてみるためにも、シンボル(スートっていいます)と四大元素、意味の対応をまずざっくり整理してみますね。

「杖」のスートがあらわすもの

四大元素の「火」、上昇志向、科学技術

「剣」のスートがあらわすもの

四大元素の「風」、理想主義、言葉での対話

「金貨」のスートがあらわすもの

四大元素の「土」、実利主義、物質的経済力

「聖杯」のスートがあらわすもの

四大元素の「水」、共感・柔軟性、愛を結ぶ力

 

…と、いったかんじです。それぞれ4つの物語、「エーデルガルトの覇王の道」「ディミトリの王の道」「クロードの鬼神の道」「先生の統一王の道」のどれがどれにあたるのか、まずは思い出して考えてみてください。当方の言うことが合ってる保証はないですからね。

 

「人間性」とは何か

 ルートとシンボルの対応の仮説を話す前に、少し覚書を書かせてください。

 帝国ルートを進んでいて、このへんのテーマについて象徴的なシーンがありました。

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ディミトリに「畜生の道」ってディスられたのです。

「畜生」とは、「てめえなんか人間じゃねえ! 獣だ!」という意味です。そしてこの「獣」というのは『風花雪月』のキーワードとしてちょくちょく出てくるのです。

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こちらの記事でも予想しているのですが、特に「どういう意味?」と考えさせる意図で「獣」という言葉が使われているのは、タレス、ソロン、クロニエら「闇に蠢くもの」たちがなんかこう女神と教会に従う人間たちを呼ぶときです。

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そして帝国ルートではレアが「白きもの」の姿になることがしばしば「獣」と呼ばれて、「あー、宗教の支配による思考停止から立ち上がって卒業していくことが人間らしさで、そうじゃないものを『獣』って呼んでんだな」とわかるのです。マリアンヌのもつ「獣の紋章」なども人間性の放棄、思考停止への誘惑を意味しています。

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 だというのに、ディミトリは「おまえたちの道は人間の道じゃねえ」って言ってくるのです。それもフェリクスに「昔のあいつはあんなんじゃなかったのに今のあいつは猪、けだもの」って言われるようなディミトリにですよ。おまえには言われたくないわ感がすごい。しかし、この「おまえには言われたくないわ」にこそ、『風花雪月』のテーマの絡み合いがあらわれている。

 

つまり、

「エーデルガルトが思っている『獣』」と、

「ディミトリが思っている『獣』」はちがう、

すなわち反対に言うと、

「エーデルガルトが目指している『人間性』」

「ディミトリが目指している『人間性』」がちがうということを、
このシーンはわれわれに示しているのです。

 エーデルガルトは、神に頼らず自ら立ち上がり歩いていく意思がなければ、獣と同じだと考えています。

ディミトリは、人の命や悲しみを想う優しい心や高潔さがなければ、獣と同じだと考えています。

クロードはまた別のことを一番大事だと考えているでしょうし、したがって銀雪ルートで描かれる「人間にとって一番大事なこと」も異なっているのです。

エーデルガルトの考えも、ディミトリの考えも、方向は違うのに、どちらも「人間性」と呼ばれるものであり、どちらも正しいことです。戦争がそれぞれの正しさやそれぞれの守りたいものの摩擦によって引き起こされることは戦争モノの常ですが、今作はそこから一歩進んで、「それぞれの人間性」の衝突であると焦点を絞ってあるところがたいへんスーパーです(語彙力)。

人間性って「性格」とかって意味じゃないんですよ!? 人間が、人間であるという「ヒトらしさ」の美徳ですよ。「人間らしさ」が何をさすのかも時代によって移り変わってきて、けっして決まったものではないのだとローレンツの食の好みの記事↓でも書きました。

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人間が人間であることの輝きですよ。そんなすばらしいもののせいで戦争がおこっちゃうんですよ。どうすりゃいいのよ。それが『風花雪月』です!

 

 では、4つのシンボルが示す4つのルート、その4つの人間性を読み解いていきましょう。

 

杖・ワンドー炎と技術

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 「杖(棒ともいう)」の一連のカードは四大元素の「火」、「人間の科学技術力」「上へ、先へ進もうとする情熱」を象徴します。すなわち、「プロメテウスの炎」です……。

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ここまでくればどのルートを意味しているのかわかりますね。「紅花」、エーデルガルトの帝国ルートです。エーデルガルトが炎の紋章を宿していることや、黒鷲の学級が「魔道を扱う者が多い」と説明されるのもこの属性にのっとっています。炎、魔道とは人が神から盗み(ネメシスの炎の紋章)、いずれ神から独立していく科学力になっていく推進力、エンジンだからです。「神から独立する意思と技術発展の力こそが人間性である」という物語です。

エーデルガルトが利害協力する「闇に蠢くもの」たちもこの「杖」の要素に属しちゃっています。やみうごは地下に住んでいはいますが、意味合い的にはバベルの塔のごとく神を軽んじどこまでも上へ上へ増長する人間の科学技術の暴走をあらわしています。「光の杭」が核の炎じみていることもそれを描いています。

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また、やみうごがエーデルガルトやリシテアらにふたつの紋章を宿そうとして非人道的な実験を繰り返すところなどは、生命倫理や運命を自在に操ろうとする傲慢、神に対する憎悪の固執をみせていて、「杖」のシンボルがあらわす人間性が行き過ぎるとこういうことになっちゃうんだな……わりと現代もそういうとこあるよな……というのがわかるようになっています。

 

 「杖」のシンボルとエーデルガルト、帝国、そしてやみうごたちが表している人間性は、歴史や社会学のうえではいわゆる「近代」として批判されるものと似ています。

18-19世紀から20世紀にかけて、人間は科学技術や啓蒙主義を地球の全土に広げ、民主主義なんかも発達させ、科学によっていろんな問題を解決し暮らしを豊かにしました。その調子で人間の叡智を伸ばしていけば最終的にはできないことはないかに思われましたが、それは驕りで公害や核戦争の脅威や資源の問題や環境破壊などてんこもりにしっぺ返しをくらうことになってしまった……という時代です。その反省の上に「現代」という時代が乗っています。

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そんな感じで現代人は近代の反省を乗りこえて未来にいこうとしてるので、とかく近代の思想は批判にさらされやすいですが、もちろん過ぎ去り、批判の対象となった古い時代、かつてもてはやされた正しさにもそれぞれの人間性の輝きがあります。それがそれぞれのルートが迎えるそれぞれの「夜明け」の光であり、そのすべてをこのゲームは祝福しています。

未来に行くべきわれわれは歴史から、そして『風花雪月』からそれらをバランスよく学ぶことができるというわけですね。さすが歴史のコーエーテクモ制作協力です。

 

 ちなみに、エーデルガルトが泳げず、血の実験のトラウマと関りのない「夜の海」を恐れるのもこうして考えると道理です。火は水に弱い。ことに「近代」的な思考の人間は「夜の海」のあらわす「理性や思考の力でどうにもならない無意識の感情」に弱いのです。エーデルガルトはつらい過去や今も痛む感情と決別し、炎の推進力でただ前へ進んでいくことを決めました。だから彼女は自分の感情の海で泳ぐことができません。先生とともに行かない限りは……。

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剣・ソード―言葉は風

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 「剣」の一連のカードは四大元素の「風」、「実体のない理想」「言葉で根気強く対話する理性の力」を象徴します。

一見あんま剣と関係なさそうですよね。剣って暴力のパゥワァーをあらわしてたりするんじゃないの?と思いそうなところですが、実はそうではないんだな。それはどっちかっていうと「杖」があらわしています。杖っていうのは魔法の杖とかじゃなくて要するに棍棒的なもの全般であり、ホモ・サピエンスがものや敵を破壊するために用いた最初の「道具」、すなわち武器でもあり知恵や技術の発端でもある……みたいなことが『2001年宇宙の旅』の映像表現でも描かれています。

2001年宇宙の旅 −SummaArs 藝術大全

さらに「剣」というものは戦力としてすぐれているとは言いがたい武器で、なぜかって武器の合理的な目的とは自分が殺されたり傷つけられたりする前に相手を殺したり動かなくしたりすることで、剣は槍とか弓とかに比べて一方的攻撃のできるリーチがてんでダメだからです。風花雪月でも弓、強いですよね~! こういう合理的な強さは「杖」の領分です。じゃあ剣はなんのためにあって、なんでわれわれも重要なもののように思ってるのかというと、剣は儀礼や誓いに使う意思の象徴だからです。日本でだって合戦では弓や槍が主に用いられましたが、「刀は武士の魂」といったのです。

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だから、剣というのは合理的圧倒的なパワーでもないし、おなかの足しにもぜんぜんならない、「誓い」だの「理想」だの「正義」だの「忠誠」だの……

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つまりコレだ!!

昔食いつめて盗みまではたらいていたアッシュが、しかし「騎士道」「正義」「甘いもの」という腹にたまらない理想を追い求めていることはこちらの記事↓でも書きました。

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 まあそんなわけで当方は王国ルートまだやってないんですが、剣は「蒼月」、ディミトリの王国ルートと思われます。さきほど述べたエーデルガルトと対立するディミトリの「人間性」とは人の命や尊厳、失われたものたちの無念を想うこと、ひらたく言うと「道徳」「倫理」みたいなものです。「道徳や言語という共通の理を用いて、わかり合えないところから対話していく力こそが人間性である」という物語です。

「正々堂々」のディミトリは、エーデルガルトやクロードのしたたかさと比べてどうしてもきれいごとを追おうとして盛大に迷走しコケているように見えますが、そのグルグルぶりがどんなに愚かに見えようとも、確かに人はそういった「人の正しき道」がなければ人らしくあることはできません。「騎士道」は実際の中世でもきちんと守られたもんではなかったのですが、しかしそういう道徳があることで人間はギリけだものに落ちずに済むというところはあります。また王国ルートをクリアしたら個別記事を書こうとおもいますが、ディミトリとブレーダッドの紋章に対応する「力」のアルカナが描いているのはそういう「けだもの」になるかならないかという理性の葛藤です。

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王国は土地が貧しく、周辺異民族や山賊との争いが絶えないのですから、なお「心の支え」がなければやってられません。たとえ実のないものであっても。騎士道以外でもそれって要するに宗教であり、帝国ルート・王国ルートでの王国が教会に親和的であることもうなずけます。帝国ルートが「近代」であるなら、王国ルートのこういうつらたんを宗教や道徳で制御するとこは実際の歴史でいう「中世」の価値観に似ています。実際帝国貴族たちの暮らしぶりは近世・近代の中央集権型で、王国貴族たちは各領地に分散して住む中世型の暮らしをしているとアネットが言ってました。

剣のスートがあらわす四大元素の「風」とは物質的実体のないもの、地に足をつけてない夢をあらわします。地に足がついてないっていうと悪く聞こえますが、夢や理想や論理を築くことができるのは間違いなく人間らしさです。「人はパンのみにて生きるにあらず」というやつです。

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 また、王国で「剣」といえばフェリクスですが、彼が大紋章をもつフラルダリウスの紋章に対応する「皇帝」のアルカナはずばり「論理」「世界を言葉によって切り分ける力」「これはこれ、それは違う、とはっきりさせる否定の力」などをあらわしています。フェリクスは現在の闇にとらわれたディミトリと共にありながらも終始否定的というかはっきりと「違うもんは違う」を突きつけており、今の彼を「猪」であると言います。

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上の中世の食習慣の記事でも書きましたが「猪」つまり家畜化されていない野生種のブタですよ、ブタは貴族の価値観からは卑しまれたいうなれば「獣・オブ・獣」です。しかも「猪突猛進」の言葉があらわすとおり周りが見えておらずやみくもに突進するディミトリの混迷もフェリクスは見抜いており、たぶんそういうディミトリの中の暴れる獣性を理性や言葉の「人間」的な力によって均衡をとっていくっていう話になるんじゃないかなあ青獅子ルートは(想像)。

 

金貨・ペンタクル―大地と経済

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「金貨」の一連のカードは四大元素の「土」、「物質的豊かさ」「現実主義」「経済力」を象徴します。

カードを見るとわかるように、なんもない野の空の下にスンとたたずんでいた「剣のキング」と比べるとまったく違う、なんか食えそうな植物(ブドウなど)が生い茂って衣と一体化してる、玉座には家畜の恵みをあらわす牛さんのレリーフがついてるという富(とみ)~!!ぶりです。おなかにたまらない理想であった「剣」とは逆に、めっちゃ腹満ちる! 金が回る! 命のときめきエキゾチック!ジャパン!

 

 もうおわかりかと思うんですけどこれは「翠風」、クロードの同盟ルートですよね。金鹿なのに翠とか土なのに風とかゴッチャゴチャなんですけど、まあ確かに「金風」じゃジョジョだし「土」ってタイトルに入れづらいからな……「黄土(おうど)」とかになっちゃうし……。土属性と風属性ってよく考えたら真逆なのにRPGだと緑っぽい感じでごっちゃにされること多くね?

同盟ルートは「フォドラの外とのさかんな外交通商がおこなわれるようになった」というゴールも金貨らしい「経済」ですが、同盟自体の性質やクラスのメンバーもたいへん経済系です。同盟は王がいない関係上、他の国より商取引の自由度が高くてさかんであるとみられますし、王国より温暖で土地も豊かなようです。

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クラスの中に二人も「商人の子」がおり、他のメンツもそれらの商人を使って政治を動かすグロスタール伯となるローレンツ、借金を返そうとケチケチするレオニー、おしゃれとお買い物好きのお嬢様ヒルダ、経済で勢力を伸ばしたエドマンド辺境伯の養女マリアンヌ。経済と特別関係なさそうな顔してるのはリシテアくらいです。

クロードはフォドラ人の常識にはない「大地の実りへの感謝」という感性をもっており、食事も大好きです。このへんの詳しいことはクロードのリーガンの紋章と対応する「月」アルカナの個別記事を参照されたし。

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クロードの主張を「金貨」的にいうと「同じ土に拠って立ち、同じように腹は減るし食事をしてうまいと思う、同じように人とつながって幸せになる、フォドラの中も外も同じ人間じゃん」というものです。確かにそうだ。つまり「金貨」を一言であらわすと「ゲンキン」ということで、「剣」とは逆に理想からではなく地に足をつけたまぎれもない現実であるこの「からだ」から考えたら、ぼくらはみんな生きているしミミズだってオケラだって友達なんだ、という考え方です。

「中世」や「近世・近代」には、特にキリスト教世界では人間の「からだ」や「土」というものは仮のもの、卑しいもので、尊い真実は「魂」や「天」あるいは頭脳のはたらかせる知性にのみ宿ると考えられてきました。「現代」でもわりとそう考えられることは多い(脳死を個人の死とする考え方とかね)ですが、頭で考えた理想概念であるナショナリズムでヤバい戦争を起こしちゃったこととか、知性で物質に満ちた文明を自在に操ってもいまいち幸せになれない社会の反省とかから、「身体性」や「体とこころをひっくるめた生き物としてのヒト」、「理性で割り切れない多様性」にもっと関心をもつべきなんじゃないの?という考えが広まっています。

 地に足をつけた現実の営みや経済は、ある程度の法則性をみつけることはできても、理想では割り切れないことに満ちています。経済することは交流することであり、自分の既存の秩序では割り切れない、受け入れがたい相手や事実と出会いまくることです。ローレンツとクロード、出会いまくり。

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クロードと「月」のアルカナの記事でも書きましたが、これが現代の日本社会にもみられる「社会的マイノリティ、ダイバーシティとの対峙」や「TPPなど自由経済による摩擦」、「移民の受け入れ方」などの諸問題です。「現代」的である同盟がエンディングのあとにどうしていくのかは、直接的にわれわれ現代人のこれからの物語でもあります。

俺たちは弱き者だ。
だからこそ、手をとって、心で触れ合う。
生きるために!

ホモ・サピエンスの二足歩行や脳、手による道具の使用が発達してきた原因は諸説ありますが、その大きなひとつが「強い好奇心」だったといわれます。あの丘の向こうには何があるんだろう? こことは違う遠くに行ってみたい。そういった「『異物』『異なる環境』という本来受け入れがたいはずのものを求め、傷つきながらも適応していく力こそが人間性である」という物語について、クロードは言っているのです。

 

聖杯・カップ―愛という水

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「聖杯」の一連のカードは四大元素の「水」、「感情」「共感・柔軟性」「人と人を結びつける力」を象徴します。

水とは気体・液体・固体を行き来する状態変化の力、そしていろんなものを溶かし合わせたり化学反応の「つなぎ」としてはたらいたりするみたいな「溶媒」の力です。つまり最も他の元素と組み合わされることができる千変万化な元素であり、よって「銀雪」、各級長の道と合わさって勝利をもたらすことができる先生の性質に対応しています。

しかし、いくら他の元素と組み合わされることができる柔軟性があるとはいえ、火と水とは容易に相容れません。同じ炎の紋章をもつものでもエーデルガルトは火、先生は水の性質をもっているので、黒鷲の学級を担任した先生は普通にいけばエーデルガルトが言う通り「あなたは私を選ばないと思っていた」となるはずで銀雪ルートに行きエーデルガルトと物別れに終わるのです。普通ならね。だからそこをあえて「火と水」が協力し合う帝国ルートの運命は特別なのですが。

 

 柔軟性以外にも聖杯はズバリ「愛」を意味しています。「感情」とか、いわゆる「情緒」ってやつですね。序盤の先生が情緒が育ってない感じなのはご存じのとおりです。それが、生徒を教え導いているうちに、笑ったり、怒ったり、悲しんだり、ラジバンダリ、親のジェラルトが驚くほどの変化をみせます。

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↑これは「ディミトリ、死んだってよ」って聞いたときの先生 ガーン!

「血も涙もない」という言葉がありますが、これは「感情」が人間にとって体液にひとしい「水」であるという感覚をあらわしています。先生は血は流れてますけど心臓は動いてません。赤ん坊のときから泣きも笑いもしませんでした。これは先生の情緒が産声をあげていない生まれたてのあかちゃん同然のものだったことも示唆しています。

感情という「水」は人間の体の中をめぐるものであるのと同じく、それを飲まないでは生きていけないものでもあります。

先生は級長たちと違ってしゃべらないし強い目的もあらわれないので、これは「水」みたいにして静かに下を流れているだけのテーマですが、先生があらわすのは愛なしには生きられず、愛ゆえにこそ人とつながっていけるのが人間性である」という物語です。確かにそうだ(全部これ言ってるな)。

 

 先生だけが他の学級の生徒や教職員たちをスカウトし、その運命を変え勝利に導くことができます。先生の学級に入ってきた生徒たちは本来交わらない運命だった他学級の生徒とも支援関係を結びます。こういった先生の力は「主人公だから」ではなく人間関係の縁と円を結び合わせる愛の力、水の力だといえます。「絆の力」とか言うと使い古されていますが。無表情主人公といいなんかペルソナ3みたいな話になってきたな。

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 先生が教団のトップや統一王の地位についたあとの世界ではセイロス教およびセテスも柔軟なものになっていったと書かれます。「聖杯」があらわす水、愛とは、人と人との友愛でもあり、神と人との間にある愛でもあります。

ソティスや、ソティスの昔をそのまま蘇らせようとしていたレアはもはやいなくなり、神から人への愛は一方的なものではなくなります。そこにあるのは双方向的で多方面的な愛の世界であり、神の実体がなくなったとしても、そうした双方向性で人が神を想うとき、神は存在していることになるのだとおもいます。そういうのが、ニーチェが「神は死んだ」って言ってからずいぶん経つ今の世でわれわれがとるべき精神世界との関係なんじゃないですかね~っていう。

水が天から降り、地に染み込み、川となって流れ、海に溶けて、

水蒸気としてまた雲になる循環で生物が生きているように。

 

 

 

 てなわけで帝国ルートも終わったので、王国ルートもちまちま進めつつ、グロスタールの紋章や帝国のひとたちの紋章の個別記事もコンスタントに書いていきたいところです。

食事の好みの記事に関しては、全員分とデータをそれぞれまとめた本を7月の同人イベントで出そうとしているので、今度詳細出しますね。

 

↓おもしろかったらブクマもらえるととてもハッピーです

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