湖底より愛とかこめて

ときおり転がります

いただき!ガルグ=マクめし―FE風花雪月と中世の食

 本稿では『ファイアーエムブレム 風花雪月』における、ガルグ=マク大修道院食堂の食事メニューとその好き嫌い、中世ヨーロッパの食文化について考察していきます。

 ローレンツとフェルディナントの好みに絞ったその②もあるよ

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 どうも、前回の風花雪月のジェンダー・イクォリティの記事にはたくさんなるほどをいただきまして感謝です。

断絶の諸岸から―FE風花雪月のジェンダー・イクオリティ① - 湖底より愛とかこめて

それぞれの烙印―FE風花雪月のジェンダー・イクオリティ② - 湖底より愛とかこめて

 ほんで「テーマにまつわるでかい話はエーデルガルトのことを理解しなきゃだから今金鹿で次帝国やって…」とか言ってたんですが、まだ金鹿です。

二部!二部には行ったから! 昨日グロンダーズ行った!

 というわけでまだジェンダーとテーマ性について考えていることをはっきり書くことはできないので、幕間としてすこしごはんの話でも楽しくしようかと……。

以下、この記事は5年後の姿、エーデルガルト、リシテアなどについてのネタバレを含みます。

 

 

 多彩なメニュー

 ガルグ=マク大修道院の食堂では、材料さえ持っていけばじつに多彩なオーダーメニューを作ってもらえます。そのメニューの豊富さたるやちょっとしたファミレスぐらいあり、この時点でこの世界の時代感、中世後期~近世初期(めんどくせえので以降中世とします)の食堂としては驚嘆に値します。(ちなみに材料をそろえて料理を作り、各人の料理の好みがあり、多彩なメニューの中で複数の料理が好みにヒットし……というシステムは制作協力のコーエーテクモのゲームでは『金色のコルダ3』を彷彿とさせます)

金色のコルダ3 フルボイス Special (通常版) - PSP

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 ペトラとアッシュの支援会話でアッシュが庶民的な宿場の食堂にペトラを連れていく場面がありますが、そこの料理は安くておいしいけれど料理名などなく、「その日手に入った食材をうまいこと調理したやつ」でしかありません。貴族や富豪のしっかりした食卓や祝祭日でもなければ一般的な中世の食ってそういうものです。炎や氷の魔法が日常生活にも使える環境上、現実の中世よりは格段に(中流以上の)食事情は豊かと考えていいのですが。

 それにしてもガルグ=マク食堂の「先生が必要な食材を持っていけば三人前くらいのオーダーメニューを作ってもらえる」というのは、現実的に考えればその都度調理するなどということは行われていないはずです。そこんとこはゲームの都合としてスルーするとしても、このメニューの多彩さは大修道院というひとつの街に相当するような人口の食事を一気に作る大食堂ならではのことといえるでしょう。かつ、大修道院は位置的にも、士官学校の生徒や巡礼者を迎えるという役割的にもフォドラの文化の中心にあるため、あらゆる土地の料理が知られ、ふるまわれているというわけです。

 

 そこでまず、メニューにある料理のいくつかの特徴をあげて、現実の中世ヨーロッパの文化を引用しつつ、フォドラの食文化の話をしていきたいとおもいます。

特徴ってなにかというと。

 ↓こちらの記事で「好き嫌いすんなリシテア」とまとめられている各人の好き嫌い表があるのですが、

【ファイアーエムブレム風花雪月】各生徒の料理好き嫌い表が面白いwwそして一部闇が深いんだよなぁ・・・ | アクションゲーム速報

実際プレイしているとそんなにリシテア嫌いなものばっかりな感じもしないんですよね。それがなぜかというと、彼女が好きなものはだいたいメニュー表の最初の方にあるからです。すなわち、メニュー表は甘いもので始まっています。

 なにい! ファミレスではスイーツは最後のページって相場が決まってんだろうが!

 そんなわけで、メニュー表は味やメイン食材の種類によって、おおむね6つのカテゴリ(あとザリガニ、雑魚の串焼き)に分けられてカテゴリごとにまとまって並んでいます(甘味強化週間や狩猟祭などでわかる)。

 各料理のこまかい性質、各人の食の好みなどはまたいずれ。

 

甘いもの

 リシテアが(唯一)大好きな(糖尿病)甘いものです。

「甘いもの」カテゴリには、メニュー表の上から

・ザガルトのクリーム添え(焼き菓子にナッツクリームやジャムを塗ったやつ)

・ブルゼン(甘いパン)

・ベリー風味のキジロースト

・桃のシャーベット

が該当します。多くの女性たちやアロイスなど好む人は多いですが、6つのカテゴリの中でも品数が少なく、内容的にもちょっと存在感薄めのカテゴリです。

背景には、そもそも現実世界において我々がイメージするような「甘味」がさかんに食べられだしたのはかなり新しい時代のことだっていうのがあるかもしれません。

 今でこそ砂糖はカジュアルに使われていて糖尿病とかもホイホイなっちゃいますが、原料のサトウキビや甜菜が庶民までいきわたる砂糖をとるために大規模に栽培されだしたのは17~18世紀のことで、それまでは「甘味」は王侯貴族や大金持ちしか手に入れることのできない「王の味」だったのです。

それが近代になり大量生産され庶民もいっぱい砂糖をとるようになるためには、現実世界では帝国主義列強の東南アジアやカリブ海諸島での植民地プランテーション農業や、サトウキビの特徴として大量の水を必要とすることによる環境破壊、手間もかかる作物なので黒人奴隷の酷使などのさまざまなヤバヤバが必要とされてきた歴史があります。この問題は現代にも続いていますね。今の我々にはあって当たり前で手放せない甘味も、ないならないで過ごせていたのになにもそこまでせんでも……と思うところですが、そこまでするのにも理由があるのです。

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  砂糖が庶民にいたるまで大量に消費されることとなった大きな理由のひとつとして、その疲労感・空腹感の軽減作用があります。

産業革命ヨーロッパの工場などで労働者を働かせる資本家たちとしては、短時間で労働者を疲労から回復させて長時間労働をさせ、生産を最大化できればサイコーです。砂糖入りの紅茶はその目的に完璧に合致していたのです。糖分はたちまち疲労回復と幸福感満足感、一時的覚醒感をもたらす特効薬であり、はたらき的にはカフェイン、タバコ、アヘン、マリファナのごとき強力な嗜好品といえるのです。現代においてはエナドリが寿命の前借りだっていうみたいな話ですね。

寸暇を惜しみ、寝る間も惜しみ、死ぬほど努力して学ぶリシテアが甘いものを求めるのは必定ですし、そういう悲しいことでもあります。でも好き嫌いはすんな。

 また、ハンネマンの言う「紋章をもつ者は辛いものよりも甘いものを好む傾向にある」という学説は、フェリクスやシルヴァンあたりがスパイシーなものを好むため、登場キャラクターの中では微妙です。

しかし、ハンネマンやリンハルトだけでなくエーデルガルトとリシテアが特に甘いものを好むため、なんとなく「紋章と甘味」の関係性は印象づけられるものがあります。彼女たちが甘いものを好むという事実は「二つの紋章を不自然に宿している精神的・身体的ストレスの重さ」を思わせるからです。彼女たちのような特殊事情でなくとも、紋章を宿しているということが多く精神的ストレス源になることはシルヴァンなどを見ていると明らかです。

 

肉料理

 先程の「ベリー風味のキジロースト」も要素的には肉が入ってるのですが、2つめのカテゴリは肉料理です。

「肉料理」カテゴリには、

・獣肉の鉄板焼き

・バクス漬けウサギの串焼き(ワインもしくはワインビネガー漬けウサギ肉)

・ダフネルシチュー(シチューといっても塩煮込みの鳥肉)

・熟成肉の串焼き(キツネ肉)

・キジの揚げ焼きデアドラ風(チーズはさみ揚げ)

が該当します。フェリクスは肉料理が全部好き。ツィリルもお肉好き。

 現代日本では、「食の欧米化によって従来の日本食に比べて肉食化が進んだ」とよく言われてますが、中世ヨーロッパの人はどのくらいお肉を食べていたのでしょうか? そこらへんのヒントはそのフェリクスの趣味「狩猟」にあります。

 砂糖と同じように、中世ヨーロッパの人々が食べているものは当然階級によって違いがあるわけですが、その大きな違いの一つがお肉です。

わりと近世的・都会的で、南にあり海辺も穀倉地帯グロンダーズ平原も有して食糧的に豊かな帝国や、商取引がさかんな同盟に比べ、王国はより中世ヨーロッパらしい、言っちゃ悪いですが食の貧しさがあります。寒いし。イングリットは食べることが大好きですが、紋章持ちとして大事にされる彼女がごはんを食べるかたわら、当主である父は味のしない汁をすすっていたというエピソードがありました。野菜くずや骨を煮ただけの具のないうっすいスープというのは貧しい土地には珍しい食べ物でもありません。『ベルサイユのばら』の「これだけ……!?」スープですね。

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ベルサイユのばらカルタ より

そういうところでの狩猟というのは、現実の中世ヨーロッパにおいては貴族騎士階級の特権的娯楽・高級な食糧源であり、領主のナワバリにある森での狩猟は領主の名において許可された場合にしかゆるされませんでした。ローレンツとレオニーの支援会話の中でレオニーの出身地サウィン村は貴族から狩りの許しと森の管理をまかされており、密猟者を取り締まるために貴族が傭兵を派遣したという事情がわかるので、フォドラでもおおむねそんな感じだということです。

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森は非常に恐ろしい無法地帯であると同時に豊かな食糧の宝庫でもあり、領有する森で狩猟をしジビエを食べるのは貴族騎士階級ならではのことなのです。フェリクスはイングリットと対照的に騎士道を嫌っていますが、剣術試合好きなことを含め、その嗜好には王国の貴族騎士階級として兄やディミトリと親しんで育った証があります。

(貴族とか騎士とかってなんなの?同一なの違うの?というあたりはこちら↓の記事をどうぞ)

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 また、ペトラの出身地ブリギット諸島は、支援会話やマップから全体が森や野山がちで、農耕より狩猟採集の割合のまさった土地だとわかります。自然が木の実や獲物を豊富に与えてくれる土地ではみんなが狩猟採集で生きています。

 いわゆるジビエ、野山や森で狩りをして得られるシカ・キツネ・ウサギ・クマ・キジ・カモ・ウズラ・シギなんかは狩人の村でなければ貴族騎士階級の食べ物だと話しました。じゃあ農村や都市の庶民は肉食べてなかったんかっていうと、それは家畜、つまりヒツジ、ヤギ、ブタ、ウシ、たまにウマなど食べてました。主に祝祭日用にですが。特にブタは庶民も食べてました。ぶたさんは雑食性のため、森で狩りは禁じられてたとしてもたいていどんぐりくらいは好きにしてよく、あとは残飯とかでもあげてれば、冬向けに干し肉や塩漬け肉を作るための「生きた備蓄」として有用でした。

かつ、ブタはあまり貴族に好まれない食材だったことも、献上せずに庶民が食べられた理由のひとつです。それがなぜなのかは次のカテゴリに関して話せそうです。

 

野菜料理

 3つめのカテゴリは野菜料理です。「野菜料理」には

・野菜たっぷりサラダパスタ(キャベツ・ニンジン・タマネギ。人気の品)

・タマネギのグラタンスープ(タマネギとマスの煮込みチーズのせ)

・赤カブ尽くしの田舎風料理(ヴェローナ?と赤カブのシチューなど)

・満腹野菜炒め(トマト・ヒヨコマメ・キャベツと卵。おなかにたまりやすい)

が含まれます。これも、「甘いもの」カテゴリと同じく少ない4品ですが、ファミレスでいえばサラダのみのページだと思えばそんなに品数がなくても当然です。加えて、これらはファミレスのサラダページと違ってすべて火を通した野菜料理です。「サラダパスタ」と銘打たれているものの材料も「キャベツ・ニンジン・タマネギ」ですからね。これは温野菜乗せ、あるいはアンチョビ味で炒めたオイルパスタとかでしょ。生の野菜や果物を食べる食習慣は16世紀ごろからのもので、それ以前は火を通すか酢漬けにするかして食べていた現実の食習慣が感じられるようでいいですね。

 品数が少ない背景の現実の歴史はまだあって。わりと最近まで、「野菜メインの料理」というものは地位が低かったという事実があります。いや今だって野菜だけの料理の地位は肉魚料理と比べれば劣りますけど、今以上に野菜というものはとるにたらないと思われていたってことです。

 貴族もタマネギスープとかポタージュとかは飲みますけど、それはあえて話題にのぼらせるほどのもんではなく、農民たちが野菜や豆類をもっぱらに食べていました。まず今みたいに栄養学的に野菜のビタミンやミネラルが必要なことが知られておらず、リシテアが野菜嫌いなようにそんなメッチャおいしいものでもないので、野菜?あんまり食べない、貴族は肉食べられるので肉食べる、ということになります。

さらに、宗教的な理由もあります。キリスト教でもセイロス教でも、主は天にましますものと教えられていますね。このことから中世ヨーロッパでは天に近い食物がより神に近くて貴く、逆に地中にあるものは卑しいとされたのです。だから果物とか狩りで得た鳥とか、木の葉や皮を食べる鹿とか、野菜であっても地上に育つ作物が貴族に好まれ、イモとかカブとかなにそれ卑しい…という認識だったのですね。ブタが貴族に好まれなかったことをさっき書きましたが、これが大きな理由のひとつです。土を嗅ぎまわってそのへんに落ちてるなんでも食べるブタは卑しい動物と蔑まれたのです。

 しかし、イモとかカブとかブタは育ててたくさん食べ物を得るのにたいへん効率のいい品目でもあり、かくしてカブはオートミールと並び農村の庶民の代表的な食べ物としての地位を築きました。『大きなかぶ』ですね。食べるのに困らねえ! やったー!

おおきなかぶ

 「赤カブづくしの田舎風料理」が「田舎風」なのはそういうことであり、この料理を好きなキャラクターを見てみても

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お貴族様の常識らしい食性をしてそうな奴はいないですね(ヒルダは豪快漁師飯とかも好きなくらいだし、一番育ちがいいのでもカトリーヌです)

↓庶民キャラの食分析と赤カブ料理レポもできたよ↓

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魚料理

 さきほど「肉料理」の項で、現代日本では、「食の欧米化によって従来の日本食に比べて肉食化が進んだ」とよく言われてますねって言いましたが、それは「日本人は肉より魚だろ、Sushiはヘルシー」ということとセットで語られがちです。じゃあ欧米人は魚食ってないのかというと案外食べてます。4つめのカテゴリは魚料理です。

「魚料理」カテゴリには

・ニシンの土鍋焼き(ニシンとカブのつみれを土鍋で焼いたやつ)

・魚と豆のスープ(マスとヒヨコマメをコトコト煮込んだスープ)

・ニシンと木の実のタルト(ニシンとクルミ煮の上品なタルト焼き)

・豪快漁師飯(マスとナマズをぶつ切りにしてガッて煮たやつ)

・フィッシュサンド(カワカマスの酢漬けとキャベツの手軽なサンドイッチ)

・二種の魚のバター焼き(ガーとニシンの上品なバタームニエル)

・パイクの贅沢グリル(カワカマスを高級な香辛料でグリルしたやつ)

の7品が含まれます。多い。

 こうしてみると多いのがわかるとおもいます。考えたら魚の種類も多いもんな。釣りができるので魚の種類が多いのは当然ですが、「獣肉」「鳥肉」って言ってるんだから食材としては「魚肉」で統一したって問題はなくない? そうしたらアルビネニシンが釣れねえ~!って大物がかかって泣くこともなかったんですけど。

 この多さ、魚の種類。魚食文化の比重の大きさもまた現実の中世に即しています。実はキリスト教、肉食べちゃいけない断食日が一年の半分くらいもあるんですよ。そういう日でも魚は食べていいため、「フィッシュ・デイ」とも呼ばれます。肉は肉欲とつながり、また清貧っぽくないため、魚を食べたり食が細い人が高貴で清廉であるとされました。このあたり、ローレンツの食の好みはとてもこの貴族らしさに即しています。(個人の食の好みの分析はまた別記事たててやろうとおもいます)

また、魚(イクテュス)はイエスの象徴物のひとつでもあり、12使徒のうち4人も前職が漁師ということで、宗教的にはますます魚っていいよね~という感じなのです。これは聖セスリーン(や、その母にして聖キッホルの妻)と魚の関係とも対応しているのですね。

新書740魚で始まる世界史 (平凡社新書)

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辛いもの

 5つめのカテゴリは辛いものです。「辛いもの」カテゴリには

・ガルグ=マク風干し肉炒め(熟成干し肉と豆を炒めたもの。塩からい)

・魚とカブの辛味煮込み(ナマズとカブの辛い煮込み。ダグザの香辛料)

・白身魚の甘辛炒め(香辛料をまぶしたナマズとドライトマトの甘辛炒め)

・激辛魚団子(マスとドライトマトと香辛料のクロケット。帝国風)

・山鳥の親子焼き(刻みキャベツ入り親子丼・七味唐辛子がけみたいなの)

の5品が含まれます。

 「辛いもの」と「中世ヨーロッパ」のかかわりといえば、ンッと思う方も多かろうとおもいます。これは緊迫するキーワードです。現実の中世ヨーロッパにおいて、香辛料はたいへんな貴重品でした。ヨーロッパで栽培されていた香辛料らしいものはバジルやローズマリーなどの香草類や、ニンニク、あと洋カラシ(マスタード)くらいで、「辛味」の代名詞であるコショウやトウガラシ、あとカレーに入ってるみたいなスパイスはなかったのです。大航海時代において香辛料の取引は莫大な富を流通させ、黒胡椒が同じだけの黄金に匹敵する価値をもっていたことはよく知られています。

そこのところは、フォドラと現実にはちょっと違いがあるみたいです。香辛料をふんだんに使った料理には「パイクの贅沢グリル」などぜいたく品であるとは書いてあるのですが、そこまで貴重品である感じではありません。しかも、メニューを見た感じトウガラシが大量に使われていそうですね。ていうかトマトがありますよトマトが。

 なぜ辛味の話なのにトマトが出てくるのかというと、トウガラシ、トマト、これはどちらも現実では新大陸アメリカからもたらされてヨーロッパの食に革命をもたらしたおいしいものだからです(ジャガイモもこれにあたります)。

さて、ここで「魚とカブの辛味煮込み」の説明に登場するダグザのことを考えてみましょう。ダグザはフォドラ(ヨーロッパ)からブリギット諸島をはさんで西にある大陸と説明されており、これはアメリカ大陸にあたります。しかし、現実とは違い、この世界の大西洋、だいぶ狭いみたいです。ブリギット諸島はダグザ=アメリカ大陸から見てカリブ諸島ぐらいの勢いのところにあるらしいのに、帝国=南西ヨーロッパから見るとエーゲ海の島ぐらいの近さだからです。こりゃ侵略も商取引もおこるわ。

 加えて、現実の歴史でカレーっぽいスパイス(クミンとかクローブとかナツメグとか)が手に入らなかったのはイスラム世界とケンカしててインドなどとの商取引の道がなかなかひらけなかったためでもあります。フォドラ周辺には今のところイスラム世界に対応するものは見当たらず、かわりに「フォドラの喉元」を隔ててパルミラ(モンゴルなどの西~中央アジアにあたるみたいですね)と接しています。ガルグ=マクの中でさえもパルミラからの商人がフォドラでひそかに取引をしているのを見ることができ、大手を振ってではないにしろわりと商取引があるみたいです。辛いものに関しては心配しなくていいフォドラ。

スパイス戦争―大航海時代の冒険者たち

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苦いもの

 苦いものっていうカテゴリのページある!? ファミレスにはないでしょ。最後の「苦いもの」カテゴリには

・ガルグ=マク風ミートパイ(肉・トマト・チーズのこんがりパイ)

・煮込みヴェローナを添えて(ナマズとヴェローナ?と二種のチーズの濃厚煮込み)

・魚介と野菜の酢漬け(生のガーとカブをマリネしたダグザ料理)

・ゴーティエチーズグラタン(鳥肉とカッテージチーズとかのグラタンにクルミがけ)

・キャベツの丸煮込み(キャベツとニシンの丸ごと煮込み、魚の内臓の苦み)

の5品が入っています。食堂の行事「ビターなひととき」でフェアをやる料理ですが、こうして見ると「苦いもの」というよりも「香ばしいもの」「濃厚なもの」が一体となって、全体として「大人の味」のまとまりのようですね。

 ヒューベルト、ハンネマン、カトリーヌがこのカテゴリをすべて好んでいます。大人舌! 逆にフェルディナント、カスパル、リシテア、ツィリルあたりはだいたい全部だめで、あと意外とシャミアが苦手としています。私は甘いものが好きなたちでな。

「大人の味」が苦手というのもやーい子供舌とばかにするものでもなく、そもそも「大人の味」というのは味覚の慣れや麻痺によってそういう味が食べられるようになっただけで、子供が嫌う「苦み」や「えぐみ」や「香味」というのは、自然界では有毒であることを示していることが多いのです。つまり子供舌は危険センサーが濁っていないピュアな能力といえ(リシテアは置いておきます)、大人舌は文字通り酸いも甘いもかみ分けてしまった麻痺の果ての境地ともいえるのですね。

<新版>おいしく食べる山菜・野草 (採り方・食べ方・効能がわかる)

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 山野草の「独特のオトナの風味」をかもしだす「アク」は本来微量の植物毒、アルカロイドであり、人間はそういう微量の毒性を代謝する能力に犬猫ちゃんとかよりえらく優れているのですが、「大人の味」とはそういう「毒に慣れている」ということであるかもしれず……。

 

何を食べているか=何者か

 フランスの政治家・法律家・美食家であるジャン・アンテルム・ブリア=サヴァランが著書『美味礼賛』で述べている有名な言葉に

ふだん何を食べているのか言ってごらんなさい、そうすれば、あなたがどんな人だか言ってみせましょう。

というのがあります。英語でいうとYou are what you eatっていうやつですね。これは現代においては「摂取した栄養が将来の体や精神状態をつくる」という意味でおもに考えられるのですが、今回のカテゴリ分けでもちょこちょこ出てきたように、食べるものは階級階級意識でも違ってきます。現代日本は身分による階級がないということになっているので普通はあまりそういうことは考えないですが、たぶん現代においても姿を変えてそういう違いは存在しているのです。

 そのあたりの意識のことを、フェルディナントとローレンツの食の好みの違いが面白かったので述べようと思ってたのですが、明日も早いので……個々人の好みの傾向や対照の記事で書くことにします。

【追記】貴族記事書けたよ

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 今日作った魚と野菜の辛味煮込みでした。

 ヴェローナってチコリ説ありますけどえっブロッコリーじゃないの?

(白ヴェローナ=カリフラワー説)

 

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