湖底より愛とかこめて

ときおり転がります

紋章タロット読者の皆様のためのカード絵解き&簡易リーディング

 本稿は同人誌『紋章×タロット フォドラ千年の旅路』をお求めいただいた、かつ当サークルのTwitter(@GargMac_meshi)をフォローしていただいている方へ向けたオマケ記事その2です。そのため、読者の方以外にも見えちゃうURLのシェアはご遠慮ください。記事へのご案内ツイートのほうはどんどんシェアしてもらって大丈夫です!

今回のオマケはオリジナルタロットカードの絵のなかみ解説です!

「おたのしみ小冊子」をお持ちの方には内容の重複がありますが書いてなかったこともちょっとあります。また、照二朗流の簡易的なカードの意味解釈もつけてます。

目次が長いから覚悟しろ!

 

 

 以下、タロット大アルカナの寓意についての記述は、辛島宜夫『タロット占いの秘密』(二見書房・1974年)、サリー・ニコルズ著 秋山さと子、若山隆良訳『ユングとタロット 元型の旅』(新思索社・2001年)、井上教子『タロットの歴史』(山川出版社・2014年)、レイチェル・ポラック著 伊泉龍一訳『タロットの書 叡智の78の段階』(フォーテュナ・2014年)、鏡リュウジ『タロットの秘密』(講談社・2017年)、鏡リュウジ『鏡リュウジの実践タロット・リーディング』(朝日新聞出版・2017年)、アンソニー・ルイス著 片桐晶訳『完全版 タロット事典』(朝日新聞出版・2018年)、アトラス『ペルソナ3』(2006年)、アトラス『ペルソナ3フェス』(2007年)、アトラス『ペルソナ4』(2009年)、アトラス『ペルソナ5』(2016年)、アトラス/コーエーテクモゲームス『ペルソナ5 スクランブル』(2020年)などを参照しています。

 

 

はじめに/イラストのぷっか先生とのご縁

 紋章個別記事を書き始めた時点で、おおむねのタロットカードのイメージは考えていました。というか、当方ってキャラクター数が多くて象徴的な性格が多い作品を見るといつも頭の中でタロットカード構想してしまうのですよね。なのでいずれ同人誌にするときにはカード絵も作ることを念頭に置いていました。

ただ自分は最低限のゆる絵しか描けないので、まあゆる絵でもタロットカードはいくらでも作っていいんですけど、頭に思い描いているイメージと画風が違いすぎるし、イメージに合致するイラストレーターさんを探しました。風花雪月界隈の絵師さんに知り合いもいないですし、①イメージに合う画風で②二次創作依頼可能で③できれば風花雪月を好きでこころよく受けてくださる 方なんてどうやって探したらいいんだよ~と途方に暮れてたんですよね。

しかしなぜか一日か二日でぷっか先生を見つけ、ウオーッこの絵柄だぜ(しかもぷっか先生はいろんなテイストの絵に対応してくれます)とひとまず打診しましたところ、なんとぷっか先生は風花雪月をよく知らなかったのに当ブログを読んで興味を持ってくださり、ぜひ描きたいと言ってくださるとともにおもむろに風花雪月を買ってプレイ! すごい速さ! ぷっか先生も本当に風花雪月を愛してくれて、お人柄もよく気が合い、天の配剤によりめでたくいっしょにカードを作っていくことになりました。それが2020年の秋のことです。

 以降約一年、密に意見やラフを交換しながら細部にわたって打ち合わせしつつ制作していただきました。ぷっか先生は当ブログのタロット記事をすべて読んでくださり、勉強熱心なうえに、もともとタロットや占い全般と親しくて、意図を汲んでくださるだけでなくインスピレーションに富んだ提案までしてくださいました。絵の要素の中にはぷっか先生のご提案から採用したものも多くあります。この場を借りてあらためてありがたいご縁だなあとぷっか先生と世界に感謝です。

実は紋章タロットと同時期から打合せさせていただいていた関連別件があり、今後もぷっか先生といっしょになんかする予定で……?

 

シンボル絵解きと簡易意味

「意味」なんですけど、普通は「正位置」「逆位置」っていうところですが、位置を問わず同じもののいいほうの出方とよくないほうの出方、みたいに考えるためにここでは独自に「正の意味」「負の意味」と呼んでいます。*1まあよいとか悪いとかではない性質もいっぱいあるのですが、そこはまあ総体的にフィーリングを感じ取っていただければ。

特に風花雪月っぽい意味合いを感じていただけるニュアンスの言葉をチョイスしたつもりです。

 

0 愚者のカード

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愚者にあたるエルネストの紋章を作中で持っているのはアンナさんですが、アンナさんが風花雪月のキャラというわけではないこととタロットの意味から主人公先生に登場してもらいました。

シンボル絵解き

右方は「right(正しい)」方向である*2ため、でたらめに見える行動をする愚者は向かって左向きに描かれることが多い*3が、風花雪月においては先生の道は正しく前進するので右向き。右はまた未来や前進を象徴する。

灰色に少し紫がかかった空の色。灰色は初期の何物でもない無感情な先生のイメージカラー。「愚者」は「世界」のカードとつながってループするため夜明けの紫の光もさしている。

剣につけた荷物袋。愚者の持つ軽い旅の荷物「棒と袋」は男根の豊穣や原初的なトリックスターのエネルギーを象徴する。*4そのため世界と愚者ではどちらかというと愚者が男先生の担当。

崖っぷちに向かって進む。危険で、一見愚かな自殺行為だが、見えない道があるのかもしれない。

足元の小動物。思い通りにならずそれぞれの意思をもつが、旅の仲間がいる。フレスベルガー、ブレーダッディス、リーガンフェリス。

正の意味

旅、冒険、魂の自由、トリックスター、異邦人、主人公

負の意味

弱者、逃避、無責任、危険、ハプニング、非合理

 

Ⅰ 魔術師のカード

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マヌエラ先生は平民で紋章をもちませんが、聖マクイルの紋章をもつ人間キャラがいなかったためマクイルに対応させられていると思わしきマヌエラ先生に登場してもらいました。ハンネマン先生を出せなかったのにマヌエラ先生を出すことには苦い汁を飲みこんだ……。

シンボル絵解き

輝く空の屋外。明るい可能性の芽吹きをあらわす。大修道院中庭の東屋がモチーフ。

指示棒。魔術師は細い棒型の神秘のステッキをもち、力に指向性を与える。

机の上に散らばる四大元素アイテム。通常は棒(火・技術)・剣(風・言葉)・金貨(土・物質)・聖杯(水・感情)*5だが、マヌエラの多彩な個性をあらわす薬草・短剣・料理鍋、酒杯。整然とせずごちゃごちゃしている。

聖なる長衣。ウェイト版では赤い衣ですが、マヌエラの場合白のコートが白衣を表している。

白い百合と赤い薔薇。女性性と男性性、聖俗、理想と現実をあわせもつ。*6

正の意味

少年、チャンス、企画立案、創造性、生命力、意志

負の意味

ムラっ気、早とちり、未熟、嘘つき、うさんくささ

 

Ⅱ 女教皇のカード

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伝統的構図とはぜんぜん変えました!!

シンボル絵解き

トランプの絵札のように上下を転換する斜めのラインにザクロとその花。出産や授乳をあらわす。*7女性の月経や出産で流される濃い血の色も暗示する意図。

炎の戦場のエーデルガルトは心臓をかきむしるようにおさえている。心臓はやわらかい内心の感情をあらわし、エーデルガルトの衣装に使われるシンボルは「ハートに×」で心の痛みを隠している。

タルティーンの戦いで勝利した夜明けのレアは左手にネメシスの首をぶら下げている。

エーデルガルト、レアとも世界の啓示を受ける巫女としてややヒステリックな狂気を感じさせる目をしている。

天帝の剣には神の慈悲をあらわすB、セイロスの剣には神の試練をあらわすJの字。*8

正の意味

少女、変容、女性の生理、感性の鋭さ、聡明、教育、慈悲

負の意味

ヒステリー、不穏、孤独、無理解、スパルタ式、秘密の暴露

 

Ⅲ 女帝のカード

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シンボル絵解き

山、川、花咲く野、麦の穂。鮮やかで肥沃な自然。

歌い踊る幸せそうなアネット。女性的な曲線美

女性と金星ヴィーナスのマークでもある♀(アンク十字)は生命のパワーを象徴する。*9

右方に向けて次の「皇帝」のフェリクスの世界につながるように岩山っぽくなっていっている。横に並べると互いの方に目線をやっている。

正の意味

母親、妊娠、性愛のよろこび、豊かな実り、努力、家族の無償の愛

負の意味

ひがみ、挫折、過保護、スポイル、無駄、周りが見えない

 

Ⅳ 皇帝のカード

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シンボル絵解き

直線的な構造の要塞アリアンロッド(ぷっか先生発案)が背景。「4」の数字はものごとを四角い規格に切り分け理性的に分節する皇帝の人間的言葉の力を象徴する。建物などの文明的構造物も4の力で作られている。*10

アネットと対照的に直立不動で気難しい表情のフェリクス。

右手に剣、左手にトロン。しばしば王笏(世俗権力)と宝珠(聖なる王権)であらわされる*11もののフェリクスアレンジ。天から降る光である雷は全知の主神の象徴であり*12、剣は武力、雷は理知をあらわす。

正の意味

父親、勝敗を決する勇気、切り分ける理性、統治、威厳、決断力

負の意味

理屈屋、とりつくしまがない、横暴、傲慢、男社会

 

Ⅴ 法王のカード

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シンボル絵解き

3本指を示す聖なる手3つ叉の燭台。法王に重ねて登場する3のモチーフは天・地・人や三位一体を示す聖なる数字であり*13、聖なる権威(三重冠・三重十字)をあらわす。*14

「法王に従う小さな双子の僧侶」*15としての表のコンスタンツェと裏のコンスタンツェ。昼ンツェの背景は彼女が失った栄光の帝都アンヴァル、夜ンツェの背景は夜を徹して魔道実験する研究室

ふたりのコンスタンツェのクロスした髪は聖なる対称性をあらわし、伝統的な法王のカードにしばしば描かれる「ローマ法王をあらわす天上と地上の鍵の交差(バチカンの国章)」*16をもじったもの(ぷっか先生発案)。

正の意味

年長者、伝統、権威、優しさ、敬意、徳が高い

負の意味

古臭い、伝統への固執、独善、虚栄心、大きなお世話

 

Ⅵ 恋人たちのカード

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シンボル絵解き

リンハルト、フレンのメインカラーである緑色。緑は萌えいずる生命と恋を象徴する。*17

フレンが指さすリンゴ。リンゴはエデンの園の知恵の実(聖書的にはなんの実に似ていたか不明っぽい*18)、また永遠を暗示する果物である。*19蛇にそそのかされたイヴが勧めて最初の男女は知恵の実を食べたとされる。リンゴの他にもさまざまな花や草の実がとりどりに存在し、どれを食べてもよい。*20

片手でフレンと手をつなぎ、釣り竿を持ち、よそ見であくびをする「選択しない男」リンハルト。

二人の前の分かれ道。このカードは「選択」とその直前のモラトリアムを表している。*21

右下の美しい色の木の枝は「吊られた男」「死神」まで繋がって展開によって色や様子を変えている(ぷっか先生発案)。

正の意味

思春期、価値観、美、選択、結婚、好きなものへの情熱

負の意味

注意力散漫、集中できない、誘惑、実(じつ)がない、無関心

 

Ⅶ 戦車のカード

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伝統的構図から少し変え、馬がひいているのは戦車ではなく食料などを積んだ荷馬車にしました。

シンボル絵解き

春の朝。これから伸びゆく生命力ある若武者、個人である大人としての旅のはじまり*22の「生の騎士」であり、「秋の夕暮れ」の死神のカードの「死の騎士」シルヴァンと対照。*23

食料や飼い葉を満載した荷馬車。馬はパワーをあらわすとともに「燃費が悪い」ことも象徴し*24、たくさんのごはんを必要とする。

荷馬車の幌(ほろ)。戦車の屋根などの「ひさし」「天蓋」は戦士が天界の加護に守られた英雄であることを示す。*25

左右対称の黒馬と白馬。体と心や意識と無意識、夢と現実などの相反するふたつの力の葛藤とそれを操縦することをあらわす。*26

手綱を握るイングリット。伝統的構図では手綱が描かれていないことも多く、このカードでもギチギチではなくふんわりとしている。力で言うことをきかせているのではなく、共通の目的に向かって馬と協働し統御していることを象徴する。*27

正の意味

体育会系の若者、栄光の旅立ち、勝利、開拓、有利な情勢、成功体験

負の意味

未熟、挫折、前しか見えない、直情的、復讐、知性に欠ける

 

Ⅷ 力のカード

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伝統的には「獅子の口に手をかけて手懐ける花冠の乙女」の構図が多い。見た目は大きく変えたが、内容は対応させてアレンジしている。

シンボル絵解き

ダスカーの悲劇にずっと心を残しているディミトリの心象風景。ディミトリが獅子、子供のドゥドゥーが花冠の乙女にあたる。

獅子・ディミトリは折れた槍をこちらに向け返り血に汚れながらも涙を流し、子を守る手負いの獣のように威嚇の咆哮をしている。獅子は愛情や悲しみなど善悪以前の原始的感情や本能の暴威の側面をあらわしている。*28

花の乙女・(ディミトリの心象の中の)子供のドゥドゥーは光る愛の花を持ち、危険な獣である荒ぶるディミトリの頬に手を伸ばしている。獣の口元に触れることは危険をかえりみない愛によって獣が急所に触れることを許したことを示す。*29

正の意味

武道の師、無限の力、獣性を抑える理性、堅忍不抜、意志強固、寛大

負の意味

暴走、欲望に負ける、決着がつかない、自責、苦痛を受ける

 

Ⅸ 隠者のカード

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シンボル絵解き

夜の屋外(吹きさらしのはげ山)。世俗の虚飾から離れ隠棲した何もない高み。

リシテアのヴェール、ローレンツにかぶせたフード付きマント。世捨て人を象徴する。*30

手持ちカンテラ。ランタンの炎は叡智の象徴。*31マントや体の内側を照らし、自分の中にある真理を追究していることをあらわす。

ローレンツの胸の赤い薔薇と、カンテラの光で照らされて描き出されるマントの青い薔薇(ぷっか先生発案)。一見派手なローレンツが内側、心を静かに照らす光も持っていることをあらわす。

正の意味

助言者、賢者、思慮深さ、精神世界の充実、瞑想、経験豊富

負の意味

陰険、頑迷、邪推する、消極的、社会性の欠如、秘匿する

 

Ⅹ 運命の輪のカード

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伝統的構図ではヒルダの位置にいるのは運命を見張るスフィンクス(ウェイト版とマルセイユ版のどちらも)。四隅のアクセサリーの位置には四大元素をあらわす四動物(ウェイト版)。

シンボル絵解き

四大元素をあらわす四隅のクラシックなジュエリー。ヒルダちゃんの手作りのイメージ。左上が火=エーデルガルトの秘めた心をあらわすブローチ、右上が風=ディミトリの誓いをあらわす指輪、左下が土=クロードの自由をあらわすピアス、右下が水=セテスやレアの親の愛をあらわすネックレス。「世界」の四大元素も同様の配置を繰り返し。アクセサリーの細かなデザインはぷっか先生による。

運命の車輪。ウェイト版に書かれるのと同じ文字は「この世の理のすべて」を象徴している。*32フライクーゲルや紋章の線形と似たかたち(ぷっか先生発案)。木製(ぷっか先生発案)で、木目の縞がヒルダの衣装にもあらわれている運命の女神のとらえがたいスピード感をあらわす。

輪をよじ登ろうとするレオニー輪の取っ手を力で回そうとするラファエルのミニキャラ。巨大な運命に挑みかかる小さな人間たち。要素が多くなり過ぎたので断念したが、当初はイグナーツが上で転がり落ちそうになって泣いている予定だった。

正の意味

運命対自由意志、ターニングポイント、幸運、大きな変化、調和

負の意味

アクシデント、不運、定めに縛られる、タイミングが悪い、流される

 

Ⅺ 正義のカード

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伝統的構図では中央に女神が一人だが、二人を正義の二側面として左右対称に配置。

シンボル絵解き

左右を分ける、剣とサークレットと天秤の輝き。どれも切れ味鋭い法の輝き、正義の女神アストライアー(星のごとく輝く者)をあらわす。*33

フェルディナントの、セテスの法典。セテスは正統に輝いているが、フェルディナントは放浪の身で薄汚れている。正義はどのような状況でも均衡を取って常に正しく輝く。

土台つき両皿天秤。聖キッホルの紋章の線形と神聖武器アッサルの槍による。皿の大きさが違うのは公正(フェア)な裁きのために調整しているため。*34

正の意味

公平公正、正当な判決、均衡、分別、両立させる、善を目指す行動

負の意味

偏向、バランスの失敗、偉そうに思われる、一方的、過干渉、断罪される

 

Ⅻ 吊られた男のカード

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シンボル絵解き

逆さ吊りのユーリス。逆さ吊りは常識を逆さに見る賢さを意味する。足の4の字で「4皇帝」の男性原理、腕の三角形で「3女帝」の女性原理を合わせ持ち、聖なる完全数「12」を暗示する。*35

表情は余裕であり、みずから望んで何かの目的で犠牲になっていることをあらわす。「死神」の前後の二枚のカードは生死の境にある者の聖性と栄誉をあらわす頭の光輪が描かれる。*36

タウ(τ)十字の木組み。木は生きた木であり、葉が茂って大地の生命力とのつながりを象徴する。タウ十字は「神と人の接点」を象徴する。*37「恋人たち」「死神」の木の枝とつながっている。

ユーリスの足を縛る。蛇、またはそれを暗示する縄は原初的な生命力の象徴。蛇は「そそのかす者」サタンやその誘いに乗ってしまったとされるユダを暗示する。*38

ボロボロのマントは悪魔の羽のようにも見え、剝がれていく胎盤のイメージももつ(ぷっか先生発案)。「節制」のベルナデッタの炎の翼と対応している。

正の意味

逆境の知恵者、試練、チャンスを待つ、見方を変える、義侠心、慎重

負の意味

艱難辛苦、徒労感、警戒心、やせ我慢、犠牲になる、スケープゴート

 

ⅩⅢ 死神のカード

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シンボル絵解き

ダークナイトで三日月の鎌をもつシルヴァン。死の騎士は馬に乗り地上の生命を「刈り取る」圧倒的で自動的な力をもつ。枝や足元の草の断面がスパリと刈られたことをあらわす。

秋の色の夕暮れ。「戦車」の生命の芽吹きをあらわす「春の朝」と対照なだけでなく、秋は「収穫としての死」をあらわす季節である。

地上に生える草と同様に地から生えたような死者の手。草のように死神によって刈り取られた命であり、風花雪月でいえばスレンの戦士や盗賊たちをあらわす。

地上に転がるマイクランの首。赤い果実が熟して刈り取られ、落ちたようにも見える。彼の人生にシルヴァンが決着をつけ(てしまっ)たことをあらわす。

正の意味

胎児、収穫、死と再生、決着をつける、新たなスタート、停滞打破

負の意味

凶兆、損失、活動停止、バッドエンド、限界に直面する、破滅

 

ⅩⅣ 節制のカード

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シンボル絵解き

グロンダーズの戦いで燃える砲台砦が背景。本来ベルナデッタはここで死んでその亡骸が炎に包まれるが、この絵では死から生還したというしかけ。精神の死の直後をあらわす。*39

焼け焦げた腕から炎が翼のように見え、土と泉を踏んでいる。炎、翼(風)、土、水の四大元素のバランスをとっており*40虹色の光を帯びている。虹はすべてのバランスの輝きをあらわす。*41手前に咲くアイリスの花も虹の女神をあらわす。翼のデザインは帝国の鷲の翼と聖インデッハの神聖武器「尽きざるもの」の意匠を意識してぷっか先生がこだわったところ。

「吊られた男」のユーリスと同様生死の境にある者の聖性と栄誉をあらわす光輪が頭の後ろにあらわれている。

正の意味

管理者、中庸、調和、多文化、多才、節度を守る

負の意味

混沌、中途半端、精神分裂、バランスの崩れ、話を聞かない、病気

 

ⅩⅤ 悪魔のカード

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シンボル絵解き

言葉巧みに指図する悪魔の手とスクロール。能弁なやり手政治家エドマンド辺境伯をモデルとしているが、強大で自分を縛る悪魔のように見ているのはマリアンヌの思い込みである。悪魔の力とは詐欺的な言葉の力であり、「法王」の権威ある聖なる手と似たものとして描いている。信仰の危うい側面をあらわす。*42

闇の中で逆五芒星のかたちに光る獣のモーリスの口(ぷっか先生発案)。逆五芒星はバフォメットなど悪魔のシンボル。*43

羊のような角と耳の生えたマリアンヌ。安寧を求めて人としての尊厳ある生をあきらめかけ、自ら縛られる家畜になりかけている人間の状態をあらわす。

首元のスカーフが首につけられた縄のように垂れている(ぷっか先生発案)が、誰に縄を引かれているわけでもない。

正の意味

能弁家、誘惑、言葉で人心を動かす、煽情的、弱い心の理解

負の意味

自己評価の低さ、詐欺、奴隷、鬱状態、妄信、悪循環

 

ⅩⅥ 塔のカード

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シンボル絵解き

暗い空に雷雨。天からの災いメッセージとしての悪天候をあらわす。

雷の直撃によって崩壊する大修道院の尖塔と、連動して墜落していく白きもの(レア)。カトリーヌや大多数のセイロス教徒にとってのレアは絶対的で偉大な塔と同じ存在である。

据わった目を光らせて斬りかかるカトリーヌ。レアの命のもと、雷霆で女神の敵を断罪するカトリーヌ自体も神の雷である。

正の意味

傲慢の崩壊、暴走の停止、必要な犠牲、荒療治、ゼロからの復興

負の意味

天災、洗脳、精神崩壊、大事故、転落、惨劇、再起不能

 

ⅩⅦ 星のカード

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伝統的構図では女性が泉に両手の水瓶から水を注いでいるが、ハピは寝てる。

シンボル絵解き

全カード中最も暗い真夜中。「塔」ですべての明かりが崩壊したどん底の真っ暗闇にささやかな星の光が見える。絶望の中の希望をあらわす。

片手を泉に、片手を大地に触れて眠っている(伝統的構図の水瓶のかわり*44)ハピと、周りでくつろぐ小動物たち。意識と無意識、体と心、昼と夜の自然なバランスを体現している。ティモテの紋章に反応する魔獣や動物たちは無意識の領域を象徴する。

ひとつがひときわ大きく輝く8つの八芒星が泉に映っている。泉の波紋のような星の軌道のような光の円が広がる(ぷっか先生発案)。

星→月→太陽は崩壊後の魂が徐々に高さと輝きを増していく一連の過程をあらわしたカードである。*45

正の意味

希望、期待の星、明るい兆し、夢を持ち続ける、リラックス

負の意味

無気力、無力、絶望、無一文、知らないことが多すぎる、期待を裏切られる

 

ⅩⅧ 月のカード

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伝統的構図に人間はいません。クロードは足元のザリガニと同様に前方へ進もうとする存在でありつつ、月の女神でもあるというしかけです。

シンボル絵解き

三日月と満月を合わせた巨大で恐ろしげな月。クロードは手を差し伸べながらも目が笑ってなくて逆光。月は豊穣の象徴でありながら危険や狂気の象徴でもある。*46中心的な象徴性は「変化」「不安定」。時間帯は夜明け前

左にパルミラ水軍の帆船(ぷっか先生発案)、右にフォドラの城塞がにらみ合っている一触即発の状態。蜃気楼のようでもあり、不確か。

敵か味方かわからない野の獣たち。「力」ともまた違った自然の脅威、不確実性と疑いの中でサバイヴしていくことをあらわす。*47

半分水から出たザリガニと、同様に片足を水に突っ込んでいるクロード。ザリガニは水という無意識の領域から地上へ上がることができる両義的なシンボルで、未発達ながら進化していける人間の心をあらわす。*48ダブルルーツをもち変化の申し子であるクロードもまた「ザリガニ」である。

正の意味

詭計や偽計、夜明けを待つ、はっきりさせない、危険な魅力、変化、増幅

負の意味

疑い、不安、潜在する危険、狂気、中途半端、卑怯な手を使う

 

ⅩⅨ 太陽のカード

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シンボル絵解き

フォドラの首飾りの城壁。「太陽」のカードには「開放的でありながら囲われた庭」が描かれ、よき家庭、そして魂が楽園に帰ってきたことをあらわす。*49

ホルスト卿と肩を組み祝杯をあげるバルタザール。マルセイユ版では「裸で遊ぶ二人の子供たち」が魂の解放と本心からの交流を象徴する。*50

強く輝く太陽と、小さなヒマワリのような花の冠。バルタザール自身がエネルギーを発散する太陽であることをあらわす。

太陽の直線の光曲線の光。硬軟織り交ぜたパワー。*51黄色の紙吹雪は金色に通じ、太陽の祝福があまねく降り注ぐことをあらわす。

正の意味

子どものように快活、子の誕生、温かい家庭、明るい将来、祝福、成就

負の意味

浪費、考えなし、没落、約束の反故、空気が読めない、自分を見失う

 

ⅩⅩ 審判のカード

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シンボル絵解き

天からの光のはしご天使の羽のようにヴェールを広げたメルセデス。天からの迎え。メルセデスの耳飾りが天使の旗の十字のように輝いている(ぷっか先生発案)。

弟を膝に抱く構図は死せるイエスを抱く「ピエタ(慈悲、あわれみ深き=メルセデスと似た意味の言葉)」の聖母子像がモチーフ。

イエリッツァが脱ぎ捨てた壊れた鎧。死神騎士の鎧は棺の代わりで、俗世の殻をあらわす。「棺」からよみがえったイエリッツァはで、「太陽」の露出度の高い裸一貫バルタザールと同様なにもかもを捨てて自由になれたことを象徴する。

正の意味

出家者(修道僧)、魂の復活、結末、最終判断、死者を供養する

負の意味

具体性のなさ、後悔、流転の身、過酷な運命の報せ、取り返しがつかない

 

ⅩⅪ 世界のカード

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シンボル絵解き

天空。大宇宙をあらわし、風花雪月らしくエンディングにみられる紫の夜明けの空にしている。「世界」のカードでたなびく布の色でもあり風花雪月のメインカラーである紫色は「すべて」「対立物の統合」を象徴する色である。*52

白雲のかわりに白い鳥たちのシルエットが飛び(ぷっか先生発案)、フォドラの人々みんなの魂の群像をあらわす。

四隅に四大元素をあらわすアイテムを差し出す各ルート特殊職級長(とセテス)の手。エーデルガルト=火のみタロットの火のシンボル(棒)ではない「紅い花(情熱)」を、ディミトリ=風は短剣(信念)、クロード=土は金貨(経済)、セテス=水は聖杯(愛)を差し出している。

植物の楕円リースを、8の字のリボンでつなげたもの。有機的な無限性を象徴し、新たな世界の「たまご」の形もあらわす。*53緑を赤白リボンで結わえる(ぷっか先生発案)のはソティスの髪型と同じ意味である。先生のバトンにもついて踊っているソティスの赤と白のリボンは対立する概念をあらわし、ソティスと先生は命の有機性で対立を結び合わせる。

「世界」のカードで踊っているのは女性的な両性具有者*54なので女先生。統合された真の自己、世界意思をあらわす。

正の意味

完成、永遠、最強、トゥルーエンド、完全勝利、異質なものどうしの結束

負の意味

消化不良、茫洋、途方に暮れる、消極的、現状維持、堂々巡り

 

 

 キャラクターやストーリー展開とタロットの対応については『ペルソナ』シリーズの読み解きもやってます。まだタロットひとつひとつの本題には入ってなくて前置き段階ですけど、ペルソナシリーズも好きな方はぜひ読んでね。

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*1:カードの意味は前掲の書籍およびゲームを中心とした種々のタロットカード解釈情報を参考にし、また個人的リーディング経験と『ファイアーエムブレム風花雪月』での表れ方をふまえて当方が再解釈したものです

*2:ミシェル・フイエ著 武藤剛史訳『キリスト教シンボル事典』(白水社・2006年)「右と左」の頁

*3:現代のタロットカードのベースとして主流になっているウェイト版の愚者が左向きである

*4:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』愚者の頁

*5:前掲『タロットの歴史』63頁

*6:前掲『タロットの歴史』64頁

*7:前掲『タロットの歴史』75頁

*8:前掲『タロットの歴史』74頁

*9:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』アンクの頁

*10:前掲ニコルズ174-177頁

*11:前掲『タロットの歴史』85頁、『タロット象徴事典』84頁

*12:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』雷#雷と神話の頁

*13:前掲フイエ「三」の頁、『タロット象徴事典』100頁

*14:前掲『タロットの歴史』95-98頁

*15:前掲ニコルズ201-202,211-212頁

*16:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』バチカンの国章の頁

*17:徳井淑子『色で読む中世ヨーロッパ』(講談社・2006年)6頁、100-103頁

*18:前掲フイエ「りんご」の頁

*19:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』黄金の林檎の頁

*20:『創世記』2章16-17節

*21:前掲ニコルズ222頁

*22:前掲ニコルズ234頁

*23:LUA『78枚のカードで占う、いちばんていねいなタロット』(日本文芸社・2017年)184頁

*24:「馬食」あるいは「eat like a horse」という言葉は大食いを意味する

*25:前掲『タロット象徴事典』128-129頁

*26:前掲『タロットの歴史』114頁

*27:前掲ニコルズ233頁

*28:前掲『タロットの歴史』150-153頁

*29:前掲『タロットの歴史』152頁

*30:前掲『タロットの歴史』131頁によれば「マントは、中世の修道会と修道士のシンボルの最たるもの」「全財産を投げ打ち修道士となる者がいたり、物乞いをしながら布教活動をするなど」

*31:前掲『タロットの歴史』132頁

*32:前掲『タロットの歴史』143頁

*33:前掲辛島38-39頁

*34:前掲『タロットの歴史』によれば「天秤の皿は水平に釣り合ってはおらず、向かって右側の皿が微妙に下がっています。(中略)正しいか正しくないかを評価する過程に容易に不正が入り込める状態にあって、正義が後世に宣告されることがあり得るのだろうかと指摘がなされています」とあるが、天秤の皿が水平でないことが「不正」となるか「公平」となるかは場合により、ときには見る人による。

*35:前掲辛島40-41頁、ニコルズ358-359頁

*36:前掲『タロット象徴事典』223頁

*37:前掲『タロット象徴事典』197-198頁

*38:前掲フイエ「蛇」の頁

*39:前掲『タロット象徴事典』223-224頁

*40:前掲『タロット象徴事典』222-223頁

*41:前掲『タロット象徴事典』224-225

*42:前掲ニコルズ431-436頁

*43:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』五芒星の頁

*44:マルセイユ版、ウェイト版ともに片方の水瓶の水を泉に、もう片方を大地に注いでいる

*45:前掲『タロットの歴史』205頁

*46:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』ディアーナの頁月#ヨーロッパの伝統文化の頁

*47:前掲『ペルソナ3』夏期講習の保険の江戸川によれば「"月"に表されるように、不安を胸に、そろりそろりと進んで行き…」

*48:前掲『タロットの歴史』209-210頁

*49:前掲『タロット象徴事典』293頁

*50:前掲『タロットの歴史』219頁

*51:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』太陽(タロット)の頁

*52:ミシェル・パストゥロー著 松村剛監修 松村恵理訳『紋章の歴史:ヨーロッパの色彩とかたち』(創元社・1997年)紋章の基本色金・銀・紫・緑・赤・青・黒についての頁

*53:前掲『タロットの歴史』237頁

*54:前掲ポラック569-570頁